たいていの人は生活しているのではなく競争しているのです。
地平線の遥か彼方の決勝点に一刻も早く着くことばかりに熱中して、息を切らせてあえぎながら走っていて、自分の通っている美しい静かな田園風景など目にも入らないでいるのです。
そのあげくにまず気がつくことは自分がもう老年になり、疲れ果ててしまい、決勝点に入ろうが入るまいが、どうでもいいことになっているのです。

『あしながおじさん』