ヒーロー気分になってしまう？
私が3年間所属していたのは、イギリスでも有数の摘発実績を誇るペドハンターグループだ。その間にグループ内で交わされた35万6799語の私的な
オンラインチャットと、831ページにおよぶフィールドノートや聞き取り調査の分析から、この種の「人間を狩る行為」に関して興味深い知見が得られた。
ペドハンターのグループに参加した人の多くが経験するのは、犯人追跡の「スリル」だ。しかしなかには、道徳観念を蝕む世界的パンデミックと
言うべきこの難題と向き合い、深い目的意識を見出す人もいる。またペドハンターの多くはかつて虐待を受けた被害者であり、
その経験が彼らのペド狩りに影響を与えていることもわかった。
彼らのなかには次のように語る者がいる。
「この地域では大勢の人が、奴らのような人間のクズによって深く傷つけられてきた」
「もし自分の行為によってひとりの子供が救われて、性被害サバイバーとしての人生を送らずにすむのなら、それだけで幸せ」
性犯罪者の摘発に費やすのと同程度の時間を費やして、ペドハンターらは互いの摘発手法の妥当性を判定する。彼らは犯罪者を嘲笑したり、
身体的もしくは言葉による暴力に訴えたりと、たんなる気晴らしにペド狩りに興じるチームを非難するのだ。そしてその手のチームと比較して、
自分たちの活動はあくまでも子供たちの身の安全を守るためにある、という点を再確認する。
それでも、ほとんどすべてのハンターグループが重視するのは、ライブ配信の視聴数と、視聴者がどれだけいるかだ。あるメンバーはこう語っている。
「この週末、われわれは2件の卑劣な行為を暴いた。（視聴数は）それぞれ25万と20万だった」
ペドハンターが自分たちの摘発活動について語ると、その口調はまるで『バットマン』のような物語に見られる“英雄の旅”的性格を帯びる。
彼らからすれば、「われわれは正規の機関の者（警察官や政治家）が排除に失敗した悪の脅威から自分たちのコミュニティを救う、
無私無欲のヒーロー」なのだ。スーパーヒーローたる彼らは道徳秩序を回復させると、無名の存在へもどる。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4f3d92f19d3ddf3d6eb2ff65e1112dc3cc217e4b?page=2