「野球は人生の助けにならない」体育会の大学野球部37歳監督が部員にご法度だったバイトを奨励する納得の理由 一生野球選手ではいられない、社会で生きる術を身に付けろ | PRESIDENT Online
https://president.jp/articles/-/63598?page=1
PRESIDENT Online 2022/11/19 11:00
清水 岳志
フリーランスライター
大学の体育会の監督やコーチといえばチーム強化最優先で、部員に厳しい練習をさせる、というイメージがある。だが、長野県の松本大学野球部の37歳監督はちがう。ご法度のバイトも許し、辞めたいと言われれば引き止めない。そうした考えの背景には、5年間プロ選手としてプレーした後にサラリーマンとして過ごした時の教訓がある。フリーランスライターの清水岳志さんが現地で密着取材した――。(文中一部敬称略)
辞めたい、と言い出した主将に監督はどう対応したか
「4年生のキャプテンが『春が終わったら辞めたい』って言うんですよ」
大学野球の関東甲信越リーグ1部に所属する松本大学野球部監督の清野友二(37歳)を訪ねると、こうあっけらかんと言う。
松本大は、甲子園に何度も出場している長野県の名門・松商学園高のグループで2002年に創立された。雄大な北アルプスが眼前に望める田園の中にキャンパスがある。
「辞めたい」と言ってきたキャプテンは、今春のリーグ戦で3番を打ち、Aクラスのリーグ4位(10チーム中)に押し上げた原動力。秋のリーグ戦はこのキャプテン不在で明らかに戦力ダウンの状態で迎えた。そもそも4年生は12人が辞めて登録は4人だけだった。緊急事態といっていい。それでも3年生の新キャプテンのもと、結果的には秋の公式戦も4位を維持することができた。
件のキャプテンは、昨秋の新チーム発足時、3年までレギュラーではなかった選手だ。高校でも補欠で大学入学時、とても試合に出せるレベルではなかったが、地道に力をつけてきて、4年では勝負どころでホームランを打つまでになった。
「見ていて泣きそうになりました。ここまで成長したかって。それが、春のリーグ戦を終えて引退させてください、って(苦笑)。でも、本人が納得できたなら、それはそれでいいかなと」
指揮官の思考は、地方特有の緩い体育会の“ゆったり放任主義”なのかと思ったら、確固たる信念があった。
「何年かやってくると選手も自分の立ち位置がわかります。本音、理想を言えは最後まで続けてほしいです。でも、ゲームに出られないのがはっきりしてるのに続けるのもね。そんな部員には『辞めろ』って、言っちゃうんです。『やりたいことがあるなら、早く、そっちをやった方がいい』と」
実際に以前、歌手になりたいという部員がいて、松本で歌手はニーズがないので埼玉へ行け、と快く送り出した、と笑う。
「目的もなく属していても意味がない。やりたいことに方向転換すべき」
そこには監督自身のセカンドキャリアの経験則があった。
社会で生きる術を身に付けろ、野球の技術は助けに……
「僕は5年間、プロの独立リーグにいて、引退して社会に出た時のつらさを感じました。生きていくには好きでもないこともやらなきゃいけないし、生活力がないと、と痛感したんで」
つまり、社会で生きる術を身に付けろ、野球の技術は助けにならない、ということだ。
清野が部員に身に付けてほしいのは自炊スキルだ。部員の3分の2ほどが入れる野球部の寮があるが、4年になったら退寮する。ひとり暮らしをさせて自活を学ぶためだ。
「プロ野球選手なんて普通はなれない。うちの場合、8、9割が就職です。野球を離れた後の人生のほうがはるかに長いので、そこで通用しないと意味がない。生きるためには“食べる”が基本。アルバイトもしたい子にはさせます。レギュラー選手もバイトしていますよ。居酒屋、コンビニ、ラーメン屋。やる子は全部、自己管理できる。野球も自活もどっちもやれと言っています」
かつては大学の強化部でアルバイトは禁止で、寮も最後までいられたが、野球しかやってない学生はコミュニティが狭くなる傾向があった。
そこで、部員に行動の自由を与えつつ、一方では自分で責任をとるという方針に変更した。すると、不思議なことに野球部の成績も上向きだしたという。やらせる野球でなく、自主的にやる野球。それにより、自分の頭を使って野球にも励むようになったのだ。
(略)
※省略していますので全文はソース元を参照して下さい。
https://president.jp/articles/-/63598?page=1
PRESIDENT Online 2022/11/19 11:00
清水 岳志
フリーランスライター
大学の体育会の監督やコーチといえばチーム強化最優先で、部員に厳しい練習をさせる、というイメージがある。だが、長野県の松本大学野球部の37歳監督はちがう。ご法度のバイトも許し、辞めたいと言われれば引き止めない。そうした考えの背景には、5年間プロ選手としてプレーした後にサラリーマンとして過ごした時の教訓がある。フリーランスライターの清水岳志さんが現地で密着取材した――。(文中一部敬称略)
辞めたい、と言い出した主将に監督はどう対応したか
「4年生のキャプテンが『春が終わったら辞めたい』って言うんですよ」
大学野球の関東甲信越リーグ1部に所属する松本大学野球部監督の清野友二(37歳)を訪ねると、こうあっけらかんと言う。
松本大は、甲子園に何度も出場している長野県の名門・松商学園高のグループで2002年に創立された。雄大な北アルプスが眼前に望める田園の中にキャンパスがある。
「辞めたい」と言ってきたキャプテンは、今春のリーグ戦で3番を打ち、Aクラスのリーグ4位(10チーム中)に押し上げた原動力。秋のリーグ戦はこのキャプテン不在で明らかに戦力ダウンの状態で迎えた。そもそも4年生は12人が辞めて登録は4人だけだった。緊急事態といっていい。それでも3年生の新キャプテンのもと、結果的には秋の公式戦も4位を維持することができた。
件のキャプテンは、昨秋の新チーム発足時、3年までレギュラーではなかった選手だ。高校でも補欠で大学入学時、とても試合に出せるレベルではなかったが、地道に力をつけてきて、4年では勝負どころでホームランを打つまでになった。
「見ていて泣きそうになりました。ここまで成長したかって。それが、春のリーグ戦を終えて引退させてください、って(苦笑)。でも、本人が納得できたなら、それはそれでいいかなと」
指揮官の思考は、地方特有の緩い体育会の“ゆったり放任主義”なのかと思ったら、確固たる信念があった。
「何年かやってくると選手も自分の立ち位置がわかります。本音、理想を言えは最後まで続けてほしいです。でも、ゲームに出られないのがはっきりしてるのに続けるのもね。そんな部員には『辞めろ』って、言っちゃうんです。『やりたいことがあるなら、早く、そっちをやった方がいい』と」
実際に以前、歌手になりたいという部員がいて、松本で歌手はニーズがないので埼玉へ行け、と快く送り出した、と笑う。
「目的もなく属していても意味がない。やりたいことに方向転換すべき」
そこには監督自身のセカンドキャリアの経験則があった。
社会で生きる術を身に付けろ、野球の技術は助けに……
「僕は5年間、プロの独立リーグにいて、引退して社会に出た時のつらさを感じました。生きていくには好きでもないこともやらなきゃいけないし、生活力がないと、と痛感したんで」
つまり、社会で生きる術を身に付けろ、野球の技術は助けにならない、ということだ。
清野が部員に身に付けてほしいのは自炊スキルだ。部員の3分の2ほどが入れる野球部の寮があるが、4年になったら退寮する。ひとり暮らしをさせて自活を学ぶためだ。
「プロ野球選手なんて普通はなれない。うちの場合、8、9割が就職です。野球を離れた後の人生のほうがはるかに長いので、そこで通用しないと意味がない。生きるためには“食べる”が基本。アルバイトもしたい子にはさせます。レギュラー選手もバイトしていますよ。居酒屋、コンビニ、ラーメン屋。やる子は全部、自己管理できる。野球も自活もどっちもやれと言っています」
かつては大学の強化部でアルバイトは禁止で、寮も最後までいられたが、野球しかやってない学生はコミュニティが狭くなる傾向があった。
そこで、部員に行動の自由を与えつつ、一方では自分で責任をとるという方針に変更した。すると、不思議なことに野球部の成績も上向きだしたという。やらせる野球でなく、自主的にやる野球。それにより、自分の頭を使って野球にも励むようになったのだ。
(略)
※省略していますので全文はソース元を参照して下さい。