五輪開幕まで3年、ビートたけし(70)は東京大会への思いを吐き出し、五輪そのものへ苦言も呈した。昨年8月に追加種目として採用が決まった野球についても、疑問点を口にした。
「アマチュアスポーツの祭典」として発展してきた大会の限界も指摘。その矛先は、近代五輪の祖、ピエール・ド・クーベルタン男爵にも及んだ。2週連続インタビューの第1回は五輪競技について―。【荻島弘一、三須一紀】
大好きなはずの野球の話題になると、たけしは表情を曇らせた。昨年8月のIOC総会で開催都市提案の追加種目として実施が決定したが、大リーガーの参加が難しいなど問題を抱えている。五輪で実施する野球に関心は寄せつつも、その言葉は否定的だった。
それでも、野球に対する愛情は深い。東京五輪で盛り上がって欲しいという思いもある。そのための、数々の秘策も明かした。
たけし 監督は、長嶋終身監督しかない。長嶋さんのロボットを作って、誰かが無線で操ってもいい。ただ、やっぱりメジャーの選手が出てくれないと。(日本ハムの)大谷が早めにメジャーに行って大活躍でもすれば、少しはつられて出そうだけど。向こう(メジャー)でバカバカ三振をとって、ホームラン打って。それで日本が大谷中心で五輪をとなったら、向こうも出てくるかもしれない。
野球は、あくまでも20年東京大会の追加種目。24年大会以降の実施は決まっていない。五輪競技として存続するためのハードルが高いからこそ、野球界そのものの改革まで口にした。
たけし まず、メジャーに対抗してアジアリーグを作らないとだめだよね。日本、韓国、台湾、中国で。アジアで一番強いチームを決めておいて、メジャーのワールドシリーズに勝ったチームにずっと挑戦し続けるとか。オーストラリアも強いから5カ国でもいい。本気になんなきゃね。
■競技が多すぎる
野球だけではない。たけしは、他の競技にも鋭く切り込んだ。33競技、339種目実施と過去最大に膨れあがった大会にも疑問があることを強調した。
たけし やっぱり、夢中になるのは陸上だね。マラソンとか、100メートルとか。本当に世界一を決めているという感じがする。だいたい、競技が多すぎるよ。全然知らないのもある。競技を増やすと言ったって、競技団体が国から金を引き出すのと、選手の家族で客を増やすことが目的。いらない競技ばかりだよ。
求めるのは「本物」。本物を知ると、そうでない物は色あせる。五輪でも、日本のスポーツ界でも同じ。映画や音楽の事例をあげて独自の理論を展開した。
たけし 外国のものが入ってきて、日本はダメになった。映画なんか、裕次郎さんのをいくら見ても、当時のハリウッド見たら違うもの。世界中の映画が、みんなハリウッドに持って行かれたのと同じで、いいところに集中するから。歌だって、外国のを知らなかった。日本人が歌っている曲だと思っていたら、コニー・フランシスやニール・セダカなどポップス歌手が歌っていた。それを日本語に訳したら人気が出た。
もっとも「本物」と盛り上がりは別。石原裕次郎の映画やカバー曲のヒットのように、スポーツ界でも同じことがあった。
たけし 昔の巨人は長嶋さんや王さんがいた。今の選手たちの方が実力はあるかもしれないけど、盛り上がりではかなわない。ラグビーも、今は外国人監督でトンガ人がどんどんやってきている。でも、盛り上がりなら松尾(雄治)の新日鉄釜石とか早稲田と明治の対抗戦の方が上だった。当時は「本物」を知らなかったから。プロってものができた時点で、五輪も終わったんじゃないかな。
たけしは「本物」のプロが登場して、五輪の存在感が薄れたという。そして、そうなった一因が五輪が重視してきた「アマチュアリズム」にあったという。
たけし もともと(古代五輪の)出場者は、参加している各国が抱えた選手たちだった。勝てば、名誉とともに莫大(ばくだい)なお金ももらっていた。最初からプロだったんだ。それを、アマチュアだと言い出したのが間違え。野球はメジャーにワールド・ベースボール・クラシック(WBC)もあるし、サッカーにはW杯がある。他の競技も五輪だけじゃなくなった。
つづく
日刊スポーツ[2017年7月30日9時56分]
https://www.nikkansports.com/m/olympic/column/edition/news/1861569_m.html?mode=all
「アマチュアスポーツの祭典」として発展してきた大会の限界も指摘。その矛先は、近代五輪の祖、ピエール・ド・クーベルタン男爵にも及んだ。2週連続インタビューの第1回は五輪競技について―。【荻島弘一、三須一紀】
大好きなはずの野球の話題になると、たけしは表情を曇らせた。昨年8月のIOC総会で開催都市提案の追加種目として実施が決定したが、大リーガーの参加が難しいなど問題を抱えている。五輪で実施する野球に関心は寄せつつも、その言葉は否定的だった。
それでも、野球に対する愛情は深い。東京五輪で盛り上がって欲しいという思いもある。そのための、数々の秘策も明かした。
たけし 監督は、長嶋終身監督しかない。長嶋さんのロボットを作って、誰かが無線で操ってもいい。ただ、やっぱりメジャーの選手が出てくれないと。(日本ハムの)大谷が早めにメジャーに行って大活躍でもすれば、少しはつられて出そうだけど。向こう(メジャー)でバカバカ三振をとって、ホームラン打って。それで日本が大谷中心で五輪をとなったら、向こうも出てくるかもしれない。
野球は、あくまでも20年東京大会の追加種目。24年大会以降の実施は決まっていない。五輪競技として存続するためのハードルが高いからこそ、野球界そのものの改革まで口にした。
たけし まず、メジャーに対抗してアジアリーグを作らないとだめだよね。日本、韓国、台湾、中国で。アジアで一番強いチームを決めておいて、メジャーのワールドシリーズに勝ったチームにずっと挑戦し続けるとか。オーストラリアも強いから5カ国でもいい。本気になんなきゃね。
■競技が多すぎる
野球だけではない。たけしは、他の競技にも鋭く切り込んだ。33競技、339種目実施と過去最大に膨れあがった大会にも疑問があることを強調した。
たけし やっぱり、夢中になるのは陸上だね。マラソンとか、100メートルとか。本当に世界一を決めているという感じがする。だいたい、競技が多すぎるよ。全然知らないのもある。競技を増やすと言ったって、競技団体が国から金を引き出すのと、選手の家族で客を増やすことが目的。いらない競技ばかりだよ。
求めるのは「本物」。本物を知ると、そうでない物は色あせる。五輪でも、日本のスポーツ界でも同じ。映画や音楽の事例をあげて独自の理論を展開した。
たけし 外国のものが入ってきて、日本はダメになった。映画なんか、裕次郎さんのをいくら見ても、当時のハリウッド見たら違うもの。世界中の映画が、みんなハリウッドに持って行かれたのと同じで、いいところに集中するから。歌だって、外国のを知らなかった。日本人が歌っている曲だと思っていたら、コニー・フランシスやニール・セダカなどポップス歌手が歌っていた。それを日本語に訳したら人気が出た。
もっとも「本物」と盛り上がりは別。石原裕次郎の映画やカバー曲のヒットのように、スポーツ界でも同じことがあった。
たけし 昔の巨人は長嶋さんや王さんがいた。今の選手たちの方が実力はあるかもしれないけど、盛り上がりではかなわない。ラグビーも、今は外国人監督でトンガ人がどんどんやってきている。でも、盛り上がりなら松尾(雄治)の新日鉄釜石とか早稲田と明治の対抗戦の方が上だった。当時は「本物」を知らなかったから。プロってものができた時点で、五輪も終わったんじゃないかな。
たけしは「本物」のプロが登場して、五輪の存在感が薄れたという。そして、そうなった一因が五輪が重視してきた「アマチュアリズム」にあったという。
たけし もともと(古代五輪の)出場者は、参加している各国が抱えた選手たちだった。勝てば、名誉とともに莫大(ばくだい)なお金ももらっていた。最初からプロだったんだ。それを、アマチュアだと言い出したのが間違え。野球はメジャーにワールド・ベースボール・クラシック(WBC)もあるし、サッカーにはW杯がある。他の競技も五輪だけじゃなくなった。
つづく
日刊スポーツ[2017年7月30日9時56分]
https://www.nikkansports.com/m/olympic/column/edition/news/1861569_m.html?mode=all