「なお...綺麗だよ。」
僕がなおにそう伝えると、なおは少し歯痒そうに頬を赤らめながら笑顔を見せた。

僕がなおと結ばれて迎える初めての夜──
僕の胸の内では緊張と喜びが交錯していた。けれど、なおはきっと僕以上の思いを抱いていた筈だ。
なおの雪のように透き通った肩に手を添える。肩がピクリと震え、なおは潤んだ瞳で僕を見つめる。どれほどの時が経ったのだろう。気付けばなおは目を瞑り、僕からの「何か」を待っている様だった。
僕は瞬時に何をすべきか、理解した。
自分の脳から何か得体の知れない物が分泌されている様な、まるで自分が自分でないような不気味で不思議な感覚に身を任せる。僕にとってのこの一瞬は、今まで生きてきた一生よりも長かった。
なおと僕の唇が触れる。柔らかい、温かい。
えも言われぬ多幸感が僕となおを包み込み、徐々に落ち着きを取り戻した僕は、五感を研ぎ澄ましてなおを感じる。耳を澄ませば聴こえるなおの鼻息、僕の胸に添えられたなおの小さな手、ほのかに届くせっけんの香り。
その全てが愛おしい。
なおの全てが愛おしい。