トライアドプリムスのライブ。それをテレビで見つめる女性がいた。
17歳で将来を嘱望されアイドルデビューした、島村卯月さんは今……
「あの頃は若かったですね」若き日を回想する島村さんは、どこか寂しげだ。
「未だに当時の夢を見ることがあるんですよ。ライブ会場で、私が活躍する夢を」
ニュージェネレーションとしてデビューするも、会社内のイザコザや仲間の行き違いに巻き込まれ、
若手や新加入アイドルの台頭に押され目立った活躍はできず1年足らずで引退を決意。
今は和風焼肉屋を営む。暖簾は今は亡き佐久間まゆが誕生日に贈ってくれたものだという。
自らも泥酔しながらも本田未央に缶汁粉を買うために立ち上がった拍子に
線路に落下した高垣楓を助けるために飛び降りたまゆの血で真紅に染まった暖簾は洗っても鮮血の色は褪せない。
あの日、島村さんも渋谷凛も楓を助けなければと思いながらも体が動かなかった。
そして島村さんはアイドルをやめた。線路の光景が、彼女に焼肉屋を選ばせた。
「いらっしゃい」
新大久保駅1番出口から歩いて3分、「やきにく SHIMAMURA」の暖簾をくぐって店内に入ると島村さんの元気な声に迎えられた。
「去年の4月にオープンしました。お客さんにアイドル時代のファンだと仰言って頂けたのはうれしかったですね」
壁には嘗てのアイドル仲間達のサイン色紙がずらりと並んでいる。
同じグループとしてデビューした渋谷凛について尋ねると……
「今はもう未練はありません。ガンバリマス!」と笑顔を見せた。