モバ7【設定41】
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VIPQ2_EXTDAT: default:vvvvvv:1000:512:----: EXT was configured ネロは喜んでパトラッシュに荷車を引かせてアントワープに行きました。ところが荷物は思いのほか重く、パトラッシュの力では引く事ができず、ネロはパトラッシュと力を合わせて荷車を押し、夜になってようやく村まで運んで来ました。ネロは5サンチームがもらえると思っていましたが、ハンスから今度の家賃から5サンチーム引いておくと言われ、ネロはがっかりしながら家に戻るのでした。 ネロはどうしてもお金が欲しくて、明日からミッシェルおじさんの手伝いをする事にしました。事情を知ったミッシェルおじさんはネロを1日1サンチームで10日間、雇ってくれる事になりました。ネロの仕事は薪を山小屋から荷車の詰み出し口まで運ぶ事です。ネロは薪がこんなに重いものだとは知りませんでした。その重さにネロは何度かくじけてしまいそうになりました。 けれどもあの白い紙に絵を描くんだという思いがネロを支えてくれたのです。薪運びの仕事は辛く、ネロはお金を稼ぐ事の大変さを身をもって知る事になりました。
ミッシェルおじさんは積み上げられた薪を詰み出し口まで運ぶのは大人でも10日かかると思っていましたが、ネロはそれを9日で終わらせてしまったのです。 期待以上の働きをしたネロにミッシェルおじさんは感心し、9日目にネロに10サンチームを渡すと、ご馳走を用意してネロに食べさせるのでした。 その日、ネロは夕方からミッシェルおじさんにもらった10サンチームを握り締めるとアントワープの町へ向かって駆け出しました。ネロは画用紙が欲しくてたまらず、明日まで待つ事ができなかったのです。 アントワープに着いた時には夜になっており、店は既に閉まっていましたが、ネロは店に入ると真新しい画用紙と鉛筆を買い求めたのです。心の求める物を求めて精一杯に生きるネロに今、最高の幸せが満ち満ちていました。 その夜、ネロは生まれて初めて手にした真っ白い画用紙を想い、ネロは嬉しくてなかなか寝つけませんでした。翌朝、ネロはさっそく真っ白い画用紙を片手に、おじいさんに付き添ってアントワープに行きます。ネロはアントワープの壊れかかった塔の上に登って絵を描こうとしました。 はずむ心でネロは画用紙に向かいましたが、いざとなると何を描いたらいいのかわからなくなるのです。初めて握る鉛筆と真っ白な画用紙がネロを緊張させていました。何となく白い画用紙を鉛筆で汚すようで恐かったのです。結局その日は何も描かないまま村に戻ってきてしまうのでした。 ネロはアロアに何を描いてよいかわからないと相談すると、アロアは迷わず一番最初に描くのはパトラッシュに決まっていると言うのです。それを聞いたネロはふっきれたかのように画用紙に向かってパトラッシュの絵を描き始めました。上手に描かなくてはと思ってどうしても描けなかったネロが今、いつもの自分を取り戻してごく自然に自分の思い通りに鉛筆が動くのでした。 パトラッシュの絵はその日のうちに完成しませんでしたが、アロアは明日のお昼の鐘が鳴るまでに完成させてほしいと言います。アロアは自分もネロに見せたいものがあるから、その時にお互い見せ合いしようと言って別れました。 アロアはネロがミッシェルおじさんの家で働いている間にレース編みを始めており、アロアはどうしてもレース編みを完成させてネロに見せたかったのです。その夜、ネロはパトラッシュの絵を、アロアはレース編みをそれぞれの家で夜遅くまで続けるのでした。 翌日になってもパトラッシュの絵もアロアのレース編みは完成しませんでした。それでもお昼の鐘が鳴るまでには完成させようと、二人は一生懸命打ち込み、ようやく完成させる事ができました。ところが待ち合わせの時間になると雨が降りだしたのです。ネロもアロアも雨の中を、待ち合わせ場所である丘の上の木の下に行き、お互いの作品を見せ合いました。 生まれて初めて物を作り出す喜びを知ったアロアは、絵を描きたいというネロの情熱が少しずつわかってくるようでした。そしてネロはいつの日かアロアの姿を描く為に早く上手になりたいと小さな胸を膨らませていたのです。 秋風が音を立てて村を吹き抜けて行く頃になると、村人達は慌ただしく草刈り仕事に出始めます。フランダースの秋はとても短く、やがて来る厳しい冬に備えて牛にやる牧草を刈り取っておかねばならないからです。 アロアの絵を描く日、それは村人総出で牧草刈りの日でした。アロアは絵を描いてもらう為にネロと約束しており、お父さんにネロと今日一日、一緒にいていいか尋ねますが、コゼツ旦那は今日は村の人みんな忙しいからと言って許可してくれませんでした。アロアはお父さんがすっかりネロを嫌っているようで、とても悲しくなってしまいます。 そんな事を知らないネロは、おじいさんの了解を得て牛乳運びは手伝わず、アロアの絵を描こうとしました。するとそこへハンスがやって来て、おじいさんに牧草刈りを手伝うように要求したのです。ですがおじいさんには牛乳運びの仕事があったのでどうする事もできません。それを聞いていたネロは画用紙を家に戻すと自分が代わりに手伝いに行くと言って駆け出して行くのでした。 牧草刈りは思いのほか辛い仕事でしたが、ネロはおじいさんと神経痛のヌレットおばさんの分まで一生懸命働きました。するとそこへアロアが家を抜け出してやって来たのです。アロアは自分も牧草刈りをすると言って聞かず、ネロは刈った牧草をまとめる仕事を手伝ってもらう事にしました。 アロアばかりではありません。ジョルジュ、ポールまでやって来たのです。ジョルジュは「友達が困っている時に助けるのが本当の男の友情だ、俺も手伝うぞ」と言うと、みんなでネロの牧草刈りの仕事を手伝ってくれたのです。みんなが協力してくれたおかげで牧草刈りは午前中で終わらせ、あとは牧草の積み込みだけとなりました。 そしてアントワープからおじいさんが帰って来ました。おじいさんは自分の代わりにネロやアロア、ジョルジュたちが手伝ってくれた事をとても感謝し、牧草の積み込みは自分がやっておくからと言って、ネロたちを遊びに行かせます。ネロはいつもの丘の上の木の下に行くと、約束通りアロアの絵を描き始めました。 ネロにとってもアロアにとっても、それは幸せなひとときでした。
コゼツ旦那が牧草刈りの様子を見にやって来ました。するとおじいさん一人が牧草の積み込みをしていたのです。そればかりかハンスはネロがアロアに草刈の手伝いまでさせたと言った為、コゼツ旦那は怒って絵を描いているネロのところに行きました。 コゼツ旦那はアロアを家に帰すと、ネロに向かって「ネロ、お前にはわしが今どれだけ怒っているかわからんだろうな。まったくお前というやつはアロアにまで草刈りなんぞの手伝いをさせておいて。 じいさんだけに働かせておいて、自分勝手にくだらん絵なぞ。みんなが忙しく働いている時に絵なんぞを描いているのは怠け者のする事だ、人間はもっと汗水滴らして働かにゃ先行きロクなもんにならんぞ。まあ今日のところは許してやる。 ただし一つだけ言っておく。アロアは間もなく遠くに勉強にやる。出発するまで二度とアロア近づくんじゃないぞ」と言って怒るのです。そしてネロの描いたアロアの絵を取り上げるとネロに「代金だ、取っておけ」と言って1フラン渡そうとしました。しかしネロは「お金は頂けません。その絵は初めからアロアにあげるつもりで描いたのです。どうぞお持ち帰り下さい」と言って受け取りません。 ネロの行為に、さらに気を悪くしたコゼツ旦那は「お前には人の親切もわからんのか。金もないくせに強情なやつだ」と言ってアロアの絵を持って帰って行きました。ネロにはアロアの絵をお金に代えるなど、できない事だったのです。 家に帰ったアロアはお父さんからイギリス行きの話を聞かされます。アロアはイギリス行きの話がなくなったと思っていただけに、それはショックなものでした。そしてネロからもらった自分の絵を抱きしめると、いつまでも外を見つめ続けるのでした。ネロにとって今日はあまりにも悲しい一日でした。 あれだけ一生懸命働いても、あれだけ一心にアロアの絵を描いても、コゼツ旦那はなぜかネロに冷たくあたるのでした。そしてアロアに二度と逢うなというコゼツ旦那の言葉がネロの胸に重くのしかかってくるのでした。 アロアがイギリスに旅立って1ヶ月。村には厳しい冬がやって来ました。朝が早い牛乳運びは、年老いたジェハンじいさん、パトラッシュ、ネロにとっていっそう辛い仕事になりましたが、ネロにはそれ以上に気にかかる事がありました。それはもうすぐクリスマスだというのにイギリスに行ったアロアから何の便りもないからです。 ネロは字が書けません。ネロは字を覚えるのにどれくらいの時間がかかるのかわかりませんでしたが、元気でいますという言葉ならもう書けるようになったのではないかと思わずにはいられません。もうすぐアロアもイギリスの学校で字を覚えて、手紙をくれるに違いないと考える事にしました。それを聞いたおじいさんも、これから少しずつネロに字を教えてあげると言ってくれるのでした。 クリスマスの2日前、ようやくアロアから両親宛に小包が届きました。中の手紙を読んだコゼツ旦那とエリーナは、やっと届いた愛娘からの手紙に嬉しくて涙してしまいます。小包が来た事を知っていたネロも、アロアからの手紙を見たかったのですが、コゼツ旦那から嫌われている事もあり、ネロは見る事ができませんでした。 小包はネロへのクリスマスプレゼントでしたが、それを知ったコゼツ旦那は中に手紙が入っていないか確かめようとします。エリーナはネロ宛なのだからと止めますが、コゼツ旦那はせっかくアロアをネロから引き離したのに、アロアがネロに小包を送った事が気に入らず、自分の許可なく小包をネロに渡す事を禁じてしまうのでした。 その夜ネロはなかなか眠れませんでした。便りもくれないアロアがぐんぐん自分から遠ざかり、別の世界へ行ってしまったような気がしたからです。翌日のクリスマスイブもネロは元気がありませんでした。そんなネロを見ていたヌレットおばさんは、おじいさんとネロにクリスマスパーティーを開こうと提案します。ヌレットおばさんも元気のないネロの姿を見るのが辛かったのです。 ヌレットおばさんはミレーヌから送ってきたお金をすべてネロに渡すと、これでアントワープに行って自分とおじいさんにはミルク酒、ネロにはケーキ、そして肉やパンを買って来るようお願いしました。さらに友達も連れてきていいと言ってくれたのです。
ネロはアントワープで買い物を済ませ、ジョルジュとポールに一緒に来ないかと声をかけました。 しかしジョルジュとポールも親戚のおばさんからパーティーに呼ばれており、ネロのパーティーには行けません。その時ネロはジョルジュから気になる事を言われました。それはコゼツ旦那がアロアをイギリスの学校に行かせたのは、勉強の為ではなく、アロアとネロを引き離す為だと言うのです。それを聞いたネロは、アロアからの手紙が届かないのはその為だと悟り、よりいっそう深く傷付いてしまうのでした。 その夜、ネロの家でネロとおじいさん、そしてヌレットおばさんの3人で盛大な、でもちょっと寂しいクリスマスパーティーが開かれました。そこへエリーナがやって来ました。エリーナはコゼツ旦那に黙ってアロアが送って来た小包を渡してくれたのです。 小包には手紙と絵を描く為のチョークが入っていました。ネロは嬉しくて嬉しくて庭を駆け回り、大喜びで何度も何度も読み返します。アロアが行ってしまってからずっと沈んでいたネロの顔に、やっと笑顔が戻って来るのでした。 ネロは朝から上機嫌でした。それは見知らぬ夫人から大聖堂に大好きなマリア様の絵を描いたルーベンスの絵が他にもある事を聞いており、今日はその絵が見られるからです。ネロはおじいさんの牛乳運びを手伝ってアントワープまで行って仕事を終わらせると、ネロは大聖堂まで走りました。 その素晴らしい絵をこれから見るのだという喜びで胸がいっぱいだったのです。ネロが大聖堂に入るとルーベンスの2枚の絵はマリア様の絵の両側にありましたが、2枚の絵にはカーテンがかけられており、教会の堂守からこの絵を観賞するには1フラン必要だと言われてしまいます。ネロはガックリと肩を落として家に帰りました。 ネロはどうしてもルーベンスの2枚の絵を見てみたいと思いますが、1フランもの大金をネロは持っていません。おじいさんから絵を見る事ができたかと尋ねられ、ネロは見たと答えてしまいます。ネロにはとても本当の事は言えませんでした。話せばおじいさんを苦しめるだけだと思ったからです。 ネロには絵を見るのにお金を払うというのが理解できませんでした。ルーベンスだってきっと一人でも多くの人に見てもらいたいと思って絵を描いたに違いないと考えていたのです。翌日それを知ったジョルジュは色々と思案し、誰か他の人が見る時に一緒に見る事を思いつきます。しかし教会の中で待ち伏せしても、誰も絵を見ようという人は現れませんでした。 ネロは大聖堂を出ると雪の中、長い間待っていたパトラッシュを抱きしめると「ごめんよパトラッシュ、待たせて。お前も一緒にあの絵が見られたらなぁ〜 お前もあの絵が見られたらどんなに素晴らしいかわかるのに」と言うのでした。 ネロはおじいさんに大聖堂のルーベンスの絵について尋ねました。おじいさんもたいそう素晴らしい絵があると話には聞いた事はあったのですが、見た事はないと言われガッカリしています。元気のないネロに心配したヌレットおばさんは、ミレーヌの使っていたスケート靴をネロにあげました。 ネロはヌレットおばさんの親切が嬉しくなかったわけではありません。ただネロはあの絵を、どうしてもあのルーベンスの絵が見たい。ネロはその気持ちを抑える事ができなかったのです。 ネロは働いたお金でおじいさんの為に一番上等の肉を1人前買い、家に戻りました。肉を買って来た事をおじいさんに知らせると、おじいさんは「せっかく辛い仕事でもらったお金なんだ、画用紙でも買えばよかったのに… 波止場の仕事は辛かったろ。 ずるいぞネロ、いつも一緒だと言っていたお前が。ネロ、ありがとう。嬉しかったよワシは。一人で自分の胸にしまっておくだけでも辛いのに、こうして仕事を見つけて私に土産まで買ってきてくれて。おじいさんこんなに嬉しい事はないよ。さあ、おいしい肉をご馳走してもらおうかな」と言います。おじいさんはアロアから教えられたのですべてを知っていたのでした。 さっそくネロは肉入りのスープの支度に取り掛かりましたが、ネロがクロに餌をやっている時におじいさんの容体が急変してしまいます。そしておじいさんはこれからネロのお母さんに逢いに行くと言うのです。 「おじいさん嫌だよう、今日はずいぶん元気だったじゃないか。おじいさん死んじゃ嫌だよ、僕を独りぼっちにしちゃ嫌だよ」「お前は独りぼっちじゃないぞ。パトラッシュだってクロだって、それにアロアやジョルジュやポールがいるじゃないか」「でも嫌だよ。おじいさんが一緒じゃないと嫌だよ」 泣きじゃくるネロに対しおじいさんは「ああ、これからはお前がどこにいてもいつも一緒だよ。お母さんと一緒にいつもお前を空から見ていてあげるよ。 さあ泣かないでお前の笑顔を見せておくれ。ほら、涙を拭いて笑っておくれ、そう、そうだよネロ。その笑顔を忘れるんじゃないよ」と言うのでした。
おじいさんはスープを欲しがりました。ネロはおじいさんにスープを飲ませますが一口飲んで「おいしい、こんなおいしいスープは初めてだよ。 ネロ、いい絵を描くんだぞ」と言ったきり天国に旅立ってしまったのです。「おじいさん、何か言ってよおじいさん。返事してよ。僕を一人にしないでよ」ネロはおじいさんの亡骸の前で一晩中泣きじゃくりました。そしてネロは夜中に家を飛び出しアロアといつも遊んだ丘の上の木の下で泣き続けるのでした。 誰にも相談できる相手もないまま翌日、ネロはおじいさんを棺に入れ、荷車に載せてパトラッシュと二人で教会横の墓地まで運びました。その頃アロアは自分の誕生日パーティーにネロとおじいさんが来ないのを不審に思い、アンドレをネロの家まで行かせますが、ネロの家には誰もいません。それを聞いたアロアはパーティーを抜け出すと自分でネロの家まで行きました。 そして誰もいないネロの家のおじいさんのベッドの上に花が捧げられているのを見た途端、何が起きたのかを知ったのです。
慌てて教会へ駆けつけるアロア。そこでおじいさんを一人で埋葬した後、質素な墓標の前にひざまずくネロの姿を目撃したのです。 「おじいさんごめんなさい、知らなかったの。あんなに元気だったのに」そう言うとアロアはそこで泣きじゃくり、ネロは悲しみのあまり教会の鐘を鳴らし続けました。おじいさんはもう二度と帰らないところに行ってしまったのです。ネロはその悲しみをぶつけるように、いつまでもいつまでも鐘を鳴らし続けるのでした。 おじいさんの買ってくれた大事なパネルにネロは夢中で絵を描き始めました。コンクールに出すのはこれしかないと決めたネロの絵は優しいおじいさんとパトラッシュの姿でした。そしてネロは夜の更けるのも忘れて描き続けるのでした。 ネロの心の中でおじいさんは生き返ったのです。本当のおじいさんが家で待ってくれているかのように久しぶりでネロの気持ちは弾んでいました。そうして一つ一つおじいさんの事を想い出して描くネロの絵は、まるでおじいさんが生きているかのようでした。 ネロが絵を描いていた時、アンドレがやって来てハンスが呼んでいると言い、ネロを風車小屋まで案内しました。ハンスは風車の調子が悪いからネロにノエルじいさんを探して来るように頼むのです。しかしノエルじいさんがどこにいるのかネロは知らないし、ネロには絵を描かなければならなかったのですが、それを知ったハンスは「家賃も満足に払えんくせによく絵なんか描いていられるな」と言うのです。 ちょうどそこへエリーナが来てくれたおかげでネロは余計な仕事を押しつけられずにすみました。そしてエリーナはそばにいたアンドレに「ネロはおじいさんがいなくなって一人っきりになってしまったの。仲良くしてあげて」と言うのでした。 おじいさんが亡くなってネロが一人っきりになってしまった為、気の毒に思ったエリーナはコゼツ旦那に、牛乳一缶をアントワープに運ぶだけではパンを1つ買うのがやっとのお金しか稼げないので、ネロに仕事を与えてはと提案します。エリーナはコゼツ旦那が村で一番責任のある人だから、一人っきりになってしまったネロを何とかしてほしいと考えていたのです。 コゼツ旦那もネロに仕事をさせた方がアロアと逢う機会がなくなると考え、コゼツ旦那はネロに仕事を手配する事にしました。
ネロは沼で汚れた人形を見つけました。ネロはそれがアロアの落とし物ではないかと考え、洗って乾かし、夜になってからアロアの家に届けに行きました。 アロアは屋根の上で夜風に当たっており、ネロもアロアに誘われるまま屋根に上がります。人形はアロアの物ではありませんでしたが、ネロとアロアは屋根の上で星を見ながら語り合いました。アロアはネロがコンクールで1等をとって来年から一緒に学校に通うのが夢だったのです。アロアはネロに必ず一等をとるようにお願いしますが、ネロにはもちろんわかりません。 それでもアロアはネロに一等をとると約束させると、星空を見あげながら、きっとおじいさんも空の上でそれを願っていると言うのでした。 ノエルじいさんはどこかの村に出かけてしまっており、当分戻って来ないと聞いたコゼツ旦那とハンスは、風車の歯車に油を差して一晩回せば良くなると聞き、さっそくその夜、実行に移しました。ところがその夜、風車小屋が火事になったのです。村人総出で消火にあたりましたが、風車小屋は燃えつき完全に焼け落ちてしまいました。 風車小屋には風車の力で挽く為の小麦が保存してありましたが、すべて燃えてしまい。しかも風車小屋に置いていなかった小麦も風車がなくなっては挽く事ができず、村人たちはこの冬をどうやって過ごそうか途方に暮れてしまいます。 しかし風車小屋は火の気がない事から、誰かが放火したのではないかと騒ぎ出し、ちょうどハンスがその夜、アロアの家から帰る途中のネロを見かけた事から、ネロが放火犯人の疑いをかけられてしまいます。 ネロはもちろん自分が火をつけたのではないと言いますが、夜出歩いていた理由を問われたネロは、拾った人形をアロアに届けに行っていたと言うとコゼツ旦那は激怒し「わしはお前が火をつけたとは断言しないが、しかし野良猫のように夜こそこそとアロアに逢った事は絶対に許さんぞ。 しかも拾った人形をアロアに」と言ってアロアの持っていたネロの拾った人形を地面に投げ捨てると「いいか、今後二度とアロアに近づくな。さあ行け、お前の顔など二度と見たくない」と言って立ち去ったのです。 その様子は村人たちのすべてが見ていました。ネロはいたたまれなさと悔しさで、その場を逃げ出しました。人形をアロアに届けに行っただけなのに、ネロは放火の疑いをかけられてしまったのです。独りぼっちのネロはこれからどうすればいいのでしょうか? 冬の夜風よりも冷たいものがネロの胸を吹き抜けるのでした。 風車小屋の火事の明くる日、ネロがいつものように牛乳運びに通ったのを見てアロアはほっとしました。村人たちの前で放火の疑いをかけられたネロの事がとっても心配だったのです。そして何事もないのを見てアロアも安心して学校に向かうのでした。 でもネロとアロアが出かけた後、火事の噂はたちまち村中に広まりネロの上にさらに辛い火の粉が降りかかって来たのです。風車小屋の被害は村人にとっても小さなものではなく、小屋に置いていた収穫されたばかりの小麦をすべて失った人もいました。 村人たちはネロが夜、出歩いていた事からネロが放火犯人だと思っており、例えネロが火をつけたのではないと思っていても、ネロをかばう事はコゼツ旦那に逆らう事になってしまい、自分まで肩身が狭くなってしまうのです。唯一ネロに牛乳運びを依頼していたジェスタスさんにも村人たちは辛い言葉を投げつけ、ジェスタスさんもネロに牛乳運びを断らなければならない状況に追い込まれてしまうのでした。 村に帰って来たネロはアンドレから村の人たちがネロを放火犯人だと言っていると聞かされます。でもアンドレはネロが火をつけたりするはずがないと考えていました。ところがそこへハンスがやって来て「放火犯人なんかに構うんじゃない。 そのうちこの村にいられなくなるからな」と怒鳴って行ったのです。アロアに人形を届けただけなのに、ネロは放火犯人にされた悔しさで、コンクールの締め切りが明後日に迫っているというのに、とうとうその日は夜になっても絵を描く気にはなれませんでした。 翌日、ネロはいつものように牛乳缶を運びにジェスタスさんの家に行くと、ジェスタスさんはネロに済まなさそうに、今日から牛乳運びの仕事をしてもらわなくていいと言いました。ジェスタスさんは自分はネロが放火犯人だとは思っていないが、コゼツ旦那から畑を借りて暮らしている以上、コゼツ旦那に逆らう事はできず、ネロに仕事を与えてやれなくなったと言うのです。 ネロはジェスタスさんの言葉を黙って聞いていましたが、話し終わると「そうですか、わかりました」と言ってその場を立ち去るのでした。 何も知らないパトラッシュは空の牛乳缶を載せた荷車を引いてアントワープに向かおうとします。しかしネロはアントワープではなく自分の家に戻ろうとするのに気付き、ネロに吠えますが、ネロは「パトラッシュ、もう牛乳運びの仕事はないんだ。さあ、家に帰ろう」と言って、今来た道を引き返して来るのでした。 その日アロアはネロが牛乳缶を引いて通りかからないのを不思議に思っていました。そしてアロアは学校へ行く馬車の上でハンスから、ジェスタスさんも仕事を断ったのでネロはもう牛乳運びをしないと聞かされます。 アロアはびっくりして馬車から降りると一目散に家に戻ってお父さんに、ネロが仕事を失ったのはお父さんがネロを放火犯人だと疑っているからだと言い、ネロが無実だと言うまで学校に行かないと言って泣き出しました。「ネロがどんなに辛い思いをしているか、パパになんかわからないわ」と言って… ネロは生活費をかせぐ為、薬草を売りにアントワープまで出かけますが、ネロの育てた薬草では売り物にはならず、店の主人のご厚意でわずかなお金をもらうだけでした。もう少しお金になると思っていのに、あまりにも少ないのでネロはがっかりしました。それだけではパン1つ買うのがやっとだったのです。ネロは再び波止場で働こうとしますが、波止場でも仕事は見つかりませんでした。 ネロは大聖堂のマリア様の絵の前でおじいさんに話しかけます。「おじいさん、僕はどうしたらいいの? 誰もわかってくれないんだ。僕が風車小屋に火をつけたんじゃないって。僕がそんな事するはずないのに。だってあの風車の歯車は僕があんなに一生懸命切った樫の木なんだ。それに僕はあの風車が回る景色が一番好きだったんだ。おじいさん、おじいさんもよく知ってるよね」と言うと泣き出してしまうのでした。 アントワープからの帰り道、ネロに出会ったアロアは「あたしはネロを信じているわ、ネロはそんな事するはずないもの。ネロ、絵はきっと仕上げてね。そうしないとおじいさんが悲しむわ。きっときっと仕上げてよ」と言ってネロを励まします。またネロに出会ったアンドレもパトラッシュの食事を差し出し「僕、ネロじゃないって信じてるよ」と言ってくれたのです。 ネロはみんながみんな自分を犯人だと思っていない、自分を信じてくれている人がいるんだという事を知って元気づけられます。そして明日に迫ったコンクールの締め切りに向けておじいさんと過ごした日々を想い出しながら絵を描き続けるのでした。 夜、アロアは自分で描いたおじいさんの絵に向かいながら「おじいさん、ネロを助けてあげてね。誰にも負けない絵を描くように祈ってね」と言います。アロアとアンドレの暖かい友情にネロは辛い事も忘れて楽しい夢を見ながら絵を描き続けるのでした。 ついにネロの絵ができあがりました。じっと見つめているとおじいさんがやさしい声で語りかけて来るような、そんな絵だったのです。ネロはさっそくおじいさんに絵を見せに教会の墓地へ行きました。 ネロはおじいさんに絵を見せた後、パトラッシュと一緒にアントワープに行こうとしますが、パトラッシュは納屋から荷車を出して引こうとします。パトラッシュはおじいさんの絵を自分で運びたかったのです。クロもアントワープに行きたがった為、ネロとパトラッシュとクロの3人で初雪の降る中をアントワープへ向かうのでした。 ネロがアントワープへ向かうのを見たアロアはネロに逢いに行こうとしますが、お父さんに止められてしまいます。 コゼツ旦那は相変わらずネロが夜にこそこそとアロアに逢いに来た事が許せなかったのです。そしてエリーナがネロにお菓子を持って行こうとするのまでコゼツ旦那は禁止してしまいます。 アロアはお父さんがネロが放火犯ではないと言うまで学校に行かないつもりでしたが、今日学校に行くとアントワープでネロに出会えるかもしれないとエリーナに説得され、学校に向かうのでした。 ネロは途中ポールに出会いました。ポールはジョルジュからネロがコンクールの絵を出品するのを見届けるようにジョルジュに言われており、雪の中をネロが通りかかるのを待っていたのです。それを知ったネロはジョルジュとホールの優しさに感謝するのでした。 ネロとポールはアントワープの公会堂に行きました。ネロはおじいさんの絵をコンクールに応募したのですが、200を越える応募がある事を知り心配になります。現場に駆けつけたアロアはネロに一等を取って来年から自分と同じ学校に通ってねとお願いし、ネロの絵が一等になるよう祈るのでした。 ネロは帰りに大聖堂に立ち寄りマリア様の絵に祈った後、コンクールに出す前に一度でいいからカーテンのかかったルーベンスの2枚の絵を見たかったと思うのでした。村への帰り道、ポールはクロを一日貸してくれと頼みます。 ポールはジョルジュがいなくなったので寂しかったのでした。それを知ったネロはポールにクロを預け、家路を急ぎます。しかしネロも人気のない暗い家に帰るのかと思うとたまらなく寂しくなるのでした。 家に着くとミッシェルおじさんが来ていました。ミッシェルおじさんはコンクールに絵を応募したのだから、自分ところで暮らす事にしようと言うのです。でもネロはコンクールの発表のあるクリスマスの日まで待ってほしいと言い、それまでは引き続きこの家で暮らす事にしました。 その日ネロはミシェルおじさんと一緒に久しぶりに楽しく夕食を食べました。ネロにとって今日はとてもいい一日でした。おじいさんの絵が完成して、アロアに逢えて、そしてミッシェルおじさんも訪ねて来てくれたのです。 明日がコンクールの発表という日、とうとうお腹が空いてパトラッシュが倒れてしまいます。ネロはなけなしの食事をすべてパトラッシュに分け与え、自分は何も食べないでいました。明日、明日になればきっといい事があると信じて… パトラッシュを気遣うネロはその日1日中パトラッシュのそばから離れませんでした。そしてアロアは「神様お願いです。 きっときっとネロの絵を一等にして下さい」と神に祈るのでした。
そして運命のコンクールの発表の日、元気になったパトラッシュと一緒に、そして途中からポールも加わって雪の中、アントワープの公会堂に行きました。コンクールの審査に時間がかかりましたが、とうとう審査結果が発表されました。しかし一等はネロの絵ではなく、ネロの絵は落選してしまったのです。ネロは目の前が真っ暗になる思いでした。 あれほど心を込め、あれほど力を振り絞って描きあげたおじいさんの絵。もしコンクールで一等がとれたら画家になる道も開けるし、200フランのお金でパトラッシュと暮らしていける。ネロが最後の希望を賭けて出品したおじいさんの絵は落選してしまったのです。ネロの目の前は真っ暗になり心の中を北風よりも冷たい風が吹き抜けていくようでした。 ネロは一人になりたいと言ってポールと別れると「パトラッシュ、もう何もかも終わったんだよ、みんなおしまいになっちゃったんだ」そう言ってネロはパトラッシュを抱きしめるのでした。 家までの遠い道のり、パトラッシュはお腹が空いて何度となく倒れそうになります。しかしネロには食べ物を買うお金もありません。ネロはパトラッシュの為に近くの家に食べ物をもらいに行きますが、誰も相手にしてくれませんでした。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています