呪言の連鎖

その牢獄の名を出すと、大悪党であろうと震え上がる。
その牢獄から生還した者は誰一人おらず、いつしかその牢獄の噂は背に尾ひれがついたものになっていた。

なんでもその牢獄では、首にも枷が嵌められるらしい。
そして、その枷の呪いによって、数々の咎人が命を落とすのだそうだ。その噂は悪党の間では有名だ。だから、その呪いを回避する方法も言い伝えられている。それでも生還できた者は居なかった。

その牢獄に収容される者は、なにも悪党だけではない。
罪を犯せば、市民だろうとその牢獄へ幽閉されることになる。
それが原因と成り、回避方法が確立されていようと、
呪いから逃れることができないらしい。

その枷の呪いの力は、「枷を外せ」と懇願する囚人に応えるように、首を体から分かつ。その首は呪言を垂れ流し、その言葉を耳にした者は知らずのうちに、枷を外せと懇願してしまう。
刑期を全うするには全ての囚人が根を上げないことが必要なのだ。