楽器職人の鉄球

コイツは、まったく酷い有り様だったよ。
耳を塞ぎたくなるような音を、昼夜問わず突然叫び始める。
なんの役にも立たない、壊れた楽器さ。

だから俺が修理してやった。
骨の折れる作業だったが、まあ何とかなったよ。
コイツは俺の手で、誰が演奏しても最高の音色を
奏でられる楽器に生まれ変わったのさ。

アンタもひとつ演ってみるかい?
なあに、簡単だよ。
この鉄球をしっかり握って、コイツに思い切り振り下ろす。
それだけさ。

ドチャ ぐちゃ べきン ボキん

ほらな、いい音色だろ?
アンタもツレを楽器にしたいなら、この鉄球を貸してやるよ。
いつでも相談しな。