「グラン……」
騎空挺の一室で、静かに眠る少年を不安そうに見守り、介抱する少女は1人声を漏らす。
「どうしてこんな事になってしまったのじゃ……我はどうすれば、グランを救えるのか……」
少女は大きくため息をつくと、少年の額に乗せた濡れタオルを取り替え、枕元に置いたすっかり温くなってしまった水を取り替えるべく立ち上がる
「我がなんとかせねばならん、なんとか……」
少女は自分に言い聞かせるように静かに呟くと立ち上がり、貯水槽へと向かった。
その途中、少女の耳にはニュースを知らせる声が届く。
『Wスターレジェンドガチャ開催中!期間中はSSRキャラ解放武器、召喚石が確定!詳細は〜」
「あんなものさえなければ、グランは……」
少女は目を伏せるとこれまでグランが受けた数々の責め苦を追憶し、唇をかんだ。 冷たい水に手を濡らし、水を汲んでいると、どたどたと騒がしい足音が船内に響き渡る。 少女はそれを聞くや否や、水を汲む手を止め、倉庫を飛び出る。
「まさか、グラン!」
操舵室へ飛び込むと、虚ろな目をした少年がフラフラと歩き、舵を握ろうとしていた。 そのポケットにはまるで嘲笑うかのように大きく口を開けた顔が描かれ、「10000円」と赤く刻まれたカードが9枚ほど刺さっている。
「グラン!もうよせ!グラン!我はもう!おぬしに傷ついて欲しくは!」
少女は必死に目に涙を溜め少年に縋り付き、舵を掴む手を離そうとするが、少年はその手に力を入れたまま動かない
「アニラ……モバコイン還元、おる……9万天井も、おる……バハルシおったら、終わる……」
「確かにHRTはそう言っておったが、あの男がそう簡単には!」
「バハルシ……おる……」
少年は何かに取り憑かれた様に舵を握ると、シェロカルテの商店を目指した