楚人に盾と矛をひさぐ者あり。
盾をして曰く、
「頑強なれば能く破る事叶わじ」
また矛をして曰く、
「鋭利なる事、この世に貫けぬ物なし」
と喧伝す。
ある時大西通り掛かる。曰く、
「矛と盾を掛け合わせてみんとてするなり」
打ち合わせたりて双方見事に壊れたり。
人落胆せしを称えて大西の曰く、
「壊れたる姿もまた、もののあはれなりけりじぇ」
腐とはかくあるべしとぞ人の言ふらむ。