今は昔、楚人に智絵里といふ者ありける。
この者巷にいふ所のあいどるなれば、美城の庭にて行為に勤しむ也(なり)。
「嗚呼。気持ち良き哉」
「智絵里殿、此処におわし候(そうろう)なりや」
「げぇっ、かな子殿」
仰天して智絵里、取るものも取り敢へず、脱兎の如く逃げ申す。
三村関曰く、
「まこと立派な肉棒なり。あのような物を携え、果たして何処に行かれたか」
智絵里に於いては走り続ける事数刻。
「見られける、見られける、彼女に見られける。いと不味し」
思い散漫にして往来、彼方よりとらつく走り来たる。
「これは」
「あっ」
不幸にも見事当たりて智絵里、意識ぞ暗転せにけり。いとかなし。

「覚醒せり。何ぞ起きたるや。嗚呼、我とらつくに轢かれてござ早漏」
「此のもの目覚めたり」
「御気付きに。然(しっか)り」
「桃華殿。ありす殿。此処は何処なりや」
「否。我らももありに非ず」
二人して曰く、
「此方は異世界なり」

続く