かくして誕生日当日、両親の協力の元、本日の晩餐会が開始された。
 一家団欒の食卓の中心には、先日俺と姉貴が買ってきたあるものが据えられてた。

「あ……」

 一番最後にダイニングに現れたユウキはそれを見て小さく零した。

「たこ焼き……」

 そう。先日俺と姉貴が買ってきたものはたこ焼き機だった。
 元は関東に住んでいた俺たち家族だが、昨年から親父の仕事の都合で大阪に引っ越してきていた。
 大阪のご家庭ではどこでもたこ焼き機があり、時に、夕食の場面に登場するそうだ。
 多感なお年頃のユウキはそんな話を聞いて密かに憧れを抱いていたのだろう。
 だから前回の俺の問いかけに対し、咄嗟に気持ちが漏れてしまったのかもしれない。
 といってもこれは、俺が姉貴に話した妄想の域を出ない推測だが。
 あながち間違いでもないらしい。
 いつもは表情らしい表情を浮かべない人形みたいなユウキが、どことなくハル姉を思わせる朗らかな笑みを浮かべている。多分、家族でしか見抜けないだろう微細な変化だが。

「ユウキ!」

 どっから用意したのだろう。姉貴がクラッカーを天井に向けて発射した。

「誕生日おめでとう! ……あ、ほら、あんたも、お父さんもお母さんも! みんなで盛大にユウキをお祝いするのよ!」

 促されるまま俺も両親もクラッカーを鳴らす。中から出てきた色とりどりのテープを頭から被り、ユウキは小さく、本当に小さく、

「……ありがとう」

 とても幸せそうに言って、恥ずかしそうに耳を赤くした。