0137名も無き被検体774号+ (ワッチョイ d692-VrEl)
2019/06/30(日) 02:24:10.29ID:+8S7s1yr0決定的な止めの寸前で、雪緒の言葉がロックの言葉を否定した。
瞬間、銀二の脳裏にまだ新しい記憶がフラッシュバックする。
銀さん、また、高市に出るんでしょう?
きっと叶うはずもない――お伽噺のような願い。
闘争剣戟の中に身を置き、死線の中で命を繋ぐものにとってそれは、あまりにも遠い日常。
願ってはならない、生きたいという望みは、戦場で最も死神に狙われやすい思いだから――
「お前、生きようとしたな」
レヴィの言葉が無情に響く。
慌てて銀二が刀に力を籠める。
「遅いぜ、遅い」
レヴィが銃身が半分になったカトラスを刀の刃に投げつける。それだけで斬撃の軌道はあっさりと急所を外れた。
「あたしらの行きつく果てはな」
もう一丁のカトラスが銃口を銀二の眉間に向ける。
「泥の棺桶だけだ」
カトラスは確かに銀二の額をゼロ距離に捉え、レヴィの指は引き金に掛かっている。
銀二の刀は、レヴィの右足を貫き静止していた。
どう足掻こうと、ここから刀を引き抜きカトラスの射程を逃れることは不可能。
完膚なきまでの敗北を悟り、
「――しくじった」
銀二が言うと同時に、凶弾が眉間を撃ち抜いた。