「――……私たちは、生きるために――戦っているつもりです!」

 決定的な止めの寸前で、雪緒の言葉がロックの言葉を否定した。
 瞬間、銀二の脳裏にまだ新しい記憶がフラッシュバックする。

 銀さん、また、高市に出るんでしょう?

 きっと叶うはずもない――お伽噺のような願い。

 闘争剣戟の中に身を置き、死線の中で命を繋ぐものにとってそれは、あまりにも遠い日常。
 願ってはならない、生きたいという望みは、戦場で最も死神に狙われやすい思いだから――

「お前、生きようとしたな」

 レヴィの言葉が無情に響く。
 慌てて銀二が刀に力を籠める。

「遅いぜ、遅い」

 レヴィが銃身が半分になったカトラスを刀の刃に投げつける。それだけで斬撃の軌道はあっさりと急所を外れた。

「あたしらの行きつく果てはな」

 もう一丁のカトラスが銃口を銀二の眉間に向ける。

「泥の棺桶だけだ」

 カトラスは確かに銀二の額をゼロ距離に捉え、レヴィの指は引き金に掛かっている。
 銀二の刀は、レヴィの右足を貫き静止していた。
 どう足掻こうと、ここから刀を引き抜きカトラスの射程を逃れることは不可能。
 完膚なきまでの敗北を悟り、

「――しくじった」

 銀二が言うと同時に、凶弾が眉間を撃ち抜いた。