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自分語りスレというものを建てたいと思ったので建てた(自己完結)

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0001名も無き被検体774号+ (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/16(土) 04:42:33.31ID:q2Y0e0Uza
建ったら書く
まあ建つまで建てるんですけどね
00411 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa4b-fSKW)
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2019/02/17(日) 03:13:58.47ID:YjSVyYGUa
いじめっ子は俺の迫真のオラオラ演技にも全く動じず、「あっうん、ちょっとさぁ」と話を進めだした
こいつ……只者じゃない!

「ちょっとこいつ殴ってん?こう、こう、こう」
いじめっ子は突如その場でシャドーボクシングを始めた
俺に殴り方をレクチャーしたいらしい
でも今の俺はオラオラなので、殴り方なんて数多の場数を踏んできたから知ってるという設定だ
俺は「あー、OKOK」と心の中で冷や汗を書きながらこれどうしようと必死に頭を働かせた

殴ったらイジメに加担した事になるしデブにも悪い
いくらデブは弾力があるからと言って、ノーガードの中学生に思いっきりパンチを食らわせたら流石に痛いだろう
俺はガリガリだけど多分痛いはずだ
痛くあって欲しい
それくらいの腕力が自分にはあると信じたい

思考が混線する中、俺は閃いた
00431 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa4b-fSKW)
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2019/02/17(日) 03:19:41.79ID:YjSVyYGUa
>>42
有り難き


殴るのがイジメなら殴り合えば良いじゃない!
マリーアントワネットもビックリの逆転の発想で、俺は何とかこの場を切り抜けられないかと思った

「でもただ殴るだけやとつまらんしさぁ……」


「ボクシング、しようや☆」


俺の人生史上イキった場面ベスト5に入るキモイ台詞を口にし、周囲の反応を伺った
周りの生徒は俺の痛々しさにドン引きしていたような記憶があるが、いじめっ子だけは何故か反応が良かった。苦笑いしてたけど。
「あ〜いいやん!じゃあ名前は?」
この時俺は「スグルだ。覚えとけ」と言いたくてたまらなかった気がする
実際は多分「あっスグルです」みたいに名乗った

「じゃあスグルVSデブ!レディ〜ファイ!カンカンカン!」
00441 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa4b-fSKW)
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2019/02/17(日) 03:28:18.26ID:YjSVyYGUa
さあ一ラウンド目
裸のデブと服を来たガリガリの因縁の対決が始まる

デブは「えっ?えっ?」とまだ状況が飲み込めてなかったようだが、この試合はそんな迷いや困惑が一番の敗因になるのだ

俺がとりあえずファイティングポーズを取ると、デブもファイティングポーズなのかウンコ気張ってんのかよく分からんポーズで答えてくれた

とりあえず勝負を仕掛けなければ話にならないので、俺が先手を仕掛ける事にした
あんまり痛くないようにデブの腹をペチッと殴った
まあジャブみたいなもんだ
俺が人生で初めて故意に人に暴力をふるった瞬間である
実際マジで痛くなかったんだろう、デブは頭に「?」を浮かべたような顔をして首を傾げた
段々腹立ってきたわこいつ、リアルで首傾げていいのは可愛い子だけなんだよ
そんな事を思った記憶がある

しかしこの様子だとデブは反撃してきそうにない
デブが反撃してこなければ俺がしてるのは結局一方的に暴力をふるうイジメと何ら変わらない

どうしよう!助けて!誰か助けて!
あっ……!そうだボンちゃん助けて!
小学生の時みたいに俺を助けて!

チラッとボンちゃんのいた方を見る

い な い
00451 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa4b-fSKW)
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2019/02/17(日) 03:34:41.24ID:YjSVyYGUa
絶望した
ボンちゃんは変わってしまったのだ
イジメの現場を目にして逃げてしまう臆病者に

……いいや、そんな事は誰だってする
ボンちゃんは悪くない
普通になっただけだ
ボンちゃんはいつまでも友達だ……!

俺の中で謎の葛藤が生まれたが、そんな事は今はどうでもいい
絶望ばかりもしてられない
この状況を打破するのは自分に他ならない、誰かを頼っている時点で駄目なんだ
そう自分に言い聞かせた

「ほら〜、やれや!デブも殴れや!頑張れ〜デブwww」

いじめっ子が健気に応援する事によって、俺のイタさにドン引いていたクラスの野次馬も次第にガヤを飛ばすようになった

「いけ〜!負けんなデブー!」
「頑張れデブー!」
「デブ殴れ!みぞおちを殴れ!」

もしかして俺はアウェーなのか?
しかし俺はへこたれずにその流れに乗じてデブを挑発した

「ホラ、殴ってこんのか?ビビっとんかデブwww」

わざと煽った
00471 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa4b-fSKW)
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2019/02/17(日) 03:44:01.81ID:YjSVyYGUa
デブはデブの癖にデブと言われたら怒り始めた
苛立ちがあからさまに顔に出た

まあ確かにいきなり現れた謎のキモくてイタいガリガリ男にデブだの何だの罵倒されたらそりゃ怒るだろう

だがこれはデブの為そして俺の為でもある
デブが殴ってこなければ俺も困る

「そんなんだからデブなんだよ」

色々と煽った中のこの発言、よっぽどデブの琴線に触れたらしい
デブはさっきまでヘラヘラ笑いながら裸でモジモジしてた奴の顔とは到底思えない、鬼のような表情に変わり始めた
「ん〜ふぅ〜……!!!!」

デブは腰を深く落とし今にも螺旋丸を打ち込みそうな体勢で構えた

えっ?ちょっと待って?
そんな感じで来るの?待って待って煽ったのはごめんてでも待って
俺そんな本気でいってないしそもそも俺殴ったの一発だけだしそのあとベラベラ喋ってただけだし
俺ガリガリだしあと俺今うんこ漏れそうだしデブにそんな感じで構えられたら流石に命の危険感じるしあと俺うんこ漏れそうだし

殴られるまでの数秒間で俺は死を覚悟した

直後デブは自らの体重全てを拳に乗せて、パンチと言うにはいささか凶暴性に溢れ過ぎた、タックルとも形容出来るようなそんな一撃を俺のみぞおち目掛けてお見舞した


いやお前みぞおち狙うんかーい、かーい、かーい……

殴られて吹っ飛ぶ間やまびこのようにその言葉が頭の中にこだました気がする
00481 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa4b-fSKW)
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2019/02/17(日) 03:50:28.46ID:YjSVyYGUa
殴られて吹っ飛ぶ
漫画だけの話だと思っていた

俺の貧弱な体は教室前方から教室後方まで綺麗に吹っ飛んだ
傍から見ればそれはそれは綺麗なアーチを描いていたと思う
後ろの机や椅子を盛大に巻き込みながら、まさにドンガラガッシャン的な音を立てて俺は背中から着地した

痛かったのは痛かったが、幸いにも俺は日常的に家で暴力を受けていたので、痛みに耐性があった
それよりもまず吹っ飛んだことに自分で驚いていた
数秒間息が出来なかったのも驚いた

それまでやいのやいの言っていた周りは俺が吹っ飛んだ瞬間ピタリと静寂に包まれた

いじめっ子も野次馬も、皆俺とデブを交互に見ていた
00491 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa4b-fSKW)
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2019/02/17(日) 03:57:06.31ID:YjSVyYGUa
程なくして、ボンちゃんが呼びに行っていた生活指導的な先生が駆けつけるなり怒鳴り散らした
ボンちゃん、そういう事だったのか……
許してくれメロス、俺はちらと君を疑った

事の顛末は事実と同じ形で先生に伝わり、いじめっ子が一番怒られ二番目に俺が怒られた
うちの先生からはイジメに関する指導の方針を帰りのホームルームで語っていた
多分隣のクラスでもそうだっただろう

しかしそんなただお説教でイジメが無くなるなら、全世界の学校はとっくにいじめゼロになっている
デブがいじめられることは少なくなったらしいが……


俺へのイジメが再び怒り始めた


理由は自分でも分かる
あの事件で見せた数々の痛い発言や行動、貧弱な体つき、キモイ声……

まあ再び起こっただけで元々経験していた事なので大したダメージはなかったが、それでもやっぱりそれからの日々は憂鬱だった
00501 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa4b-fSKW)
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2019/02/17(日) 04:02:54.84ID:YjSVyYGUa
とまあこれが小卒から中一の頃の学校の話

マジでただの自分語りだから別にオチとかはないけど許してヒヤシンス
これからもこんな感じでちょっとずつまったり書いてく

このペースだと次あたりに本格的にヤバい出来事の話に書けそうだから楽しみにしてる(自己完結)

また時間空いたら書きますわ
読んでくれた人ありがとう
0052名も無き被検体774号+ (ワッチョイWW 4712-lPFl)
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2019/02/17(日) 20:50:39.95ID:k105iQvG0
文章うまいな引き込まれる
00531 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa4b-fSKW)
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2019/02/18(月) 18:42:55.45ID:UPyCkllWa
よーし今夜書くぞー
人居るかどうか分からんが
0055名も無き被検体774号+ (ワッチョイWW c7fe-QM8q)
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2019/02/18(月) 23:35:00.68ID:lYB1nnyX0
追い付いた
見てるぞ
00561 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 01:39:39.46ID:AOHbu/mca
有り難き幸せ
かく
00571 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 01:57:42.89ID:AOHbu/mca
中二になった夏休み、俺は小説家になるという夢を叶える為にとある大きな決断をした
それは文藝会新人賞に応募する事だ

確か初秋の頃くらいに締切があって、夏休み丸々使って小説を書きあげればギリ応募出来ると思った
夏休みの課題なんかは超優等生の俺は数日で全て終わらせ、小説を書くことだけに全てのエネルギーをぶつけられる環境を整えた

ボンちゃんから遊びに度々誘われたので、当初昼間に家で書く予定だった俺は、次第に近くの市民センターでボンちゃんと一緒に過ごしながら小説を書くようになった
00581 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 02:04:48.11ID:AOHbu/mca
その頃は既に向井(>>35~参照)からもちょいちょい遊びに誘われたが、奴はどちらかと言うとアウトドア派でバスケやサッカーとかがほとんどだったので俺は丁重にお断りしていた
それでもしつこく誘ってくれるので良い奴
ちなみに向井はサッカー部だった

さて、俺はいつものように市民センターにてボンちゃんの他愛のない話を聞き流しながら、必死に小説を書き進めていた
確か小説の内容は、記憶喪失の青年が記憶を取り戻そうとするが、それを進めていくうちに実は自分がとんでもないクズ人間だと発覚してしまう、みたいな内容だったと思う

俺はこの極めて陳腐な内容の書き物を、極めて稚拙な文章力で必死に表現しようとしていた
中学生の語彙力なんてたかが知れているもの
しかしこの頃の俺は自分の才能に対して全く疑いを持っていなかった
00591 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 02:12:00.15ID:AOHbu/mca
ところでその市民センターは遊び部屋みたいなのがあって(というより子供の入れる場所はそこしか無かったような気がするが)、マットやブロック、小さなちゃぶ台と座布団など最低限勉強と遊びができる道具及び空間は用意されていた

夏休みということもあってかたまーに近所の小中学生が遊びに来たり、おばちゃんが受付みたいな人と雑談しに来たりしていた
だが別にそれを邪魔だとは思っていなかった
俺はその会話や笑い声、近くで鳴る車のエンジン音や蝉の鳴き声を無意識に聴きながら、リラックスした状態で書いていた

もし俺が家で一人寂しく書いていたらとっくに執筆を投げ出していたかもしれない
家で書くこともあったが、ここで書いている時はやたらと筆が軽かった
ボンちゃんに感謝だ

そうして順調に原稿用紙をクソ汚い字で埋めていたある日、事件が起こる
00601 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 02:15:18.00ID:AOHbu/mca
いつものようにボンちゃんに誘われ、俺は昼から7~8時間ほどぶっ通しで小説を書いていた
途中でボンちゃんがお菓子を買ってくれたり、マットで一人遊んでいたりして、よくこんな俺と一緒に長時間居られるなと思ってた

夜も次第に更けていき、外が薄暗くなってきた時だ
見ない顔の中学生グループが市民センターに入ってきた
00611 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 02:22:13.99ID:AOHbu/mca
一目で分かった
こいつらはいじめる側の人間だ
いや、誰でも見れば分かったと思う

というのも、入ってきた3人組の内の一人は髪を金色に染め上げ、一人はゴリゴリの筋肉に真っ赤なタンクトップ、一人は金属アレルギーの人なら発狂してしまうほど衣服にジャラジャラとチェーンを付けていた

どっからどう見てもコテコテのヤンキーである

三人組はどうやらこんな時間からプロレスを開始するらしい
入ってくる時に一瞬目が合ったが、幸いにもマットは奥の方にあり俺達に構うことは無かった
00621 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 02:32:30.62ID:AOHbu/mca
ボンちゃんはその三人組を一瞥して「もうそろ出ようや」と言ってきたが、俺はこの時凄くいいところで、今辞めるのは惜しかったので「俺はもうちょっとおる」と返事した
ボンちゃんはそれを聞いて一人で帰ることも無く、黙って俺のそばで座ってた

しばらくの間、奥の三人組はギャアギャア騒ぎながらマットの上でプロレスをしていた
たまにチラッと目をやると、二人の男がくんずほぐれつの取っ組み合いをし、もう一人がジャッジを行っている光景が目に入った
腐女子大歓喜

それから一時間くらいは経っただろうか、流石に疲れたらしく三人でぐでーっとマットの上に寝そべったりヤンキー座りで会話し始めた
面白かったのはどのタイミングでも三人同じ体勢だった事だ
三つ子かお前ら

俺とボンちゃんもその頃には一段落ついて、うまい棒かなんかを貪り食ってた記憶がある

突然、三人のうち一人が「何食べよーん!?」と大声で絡んできた
00631 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 02:38:29.88ID:AOHbu/mca
俺はその瞬間やっちまったと思った
もうちょっと早く帰れば絡まれずに済んだかもしれない
俺は努めて真顔で「駄菓子です」と答えた
ヤンキー達はその返事を合図に
「えー何何ー?」
「なんて?声小さいね君www」
「俺らも腹減ったけん分けてくれーん?」
とズカズカこちらに歩み寄ってきた

ボンちゃんと俺は顔を見合わせた
まだ別に何か良からぬ事態が起こった訳では無い
だが俺達は察していた
このあと面倒な事になるというのを
00641 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 02:45:04.17ID:AOHbu/mca
目の前に来た三人は白々しく駄菓子に興奮し
「おっ〇〇(駄菓子の名前、覚えてない)やーん!」
みたいな事を言って騒いでみせた

ほどなくして一人が、「それ何?宿題?」と俺の原稿用紙を見て言った
ボンちゃんはこの時すごく慌てふためいていたと思う
だがこの時の俺はどこかズレてた
自分の才能を披露してヤンキー達に尊敬され崇め奉られる未来しか見えていなかった

「小説です。文藝会新人賞に応募するものです」
俺は鼻高々と答えたと思う

ヤンキー達は一瞬キョトンとした

さぁ、ひれ伏せ!
夏休みのこんな時間まで小説を書いている趣溢れる俺に感服し、感動せよ!
くるしゅうない、ちこうよれ!



「何?ちんちんショー?」
ぶん殴ってやろうかこいつと思った
00651 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 02:59:30.43ID:AOHbu/mca
「小説です。文藝会新人賞に応募するものです」
確か同じ事を二回言った気がする

チェーン付けた野郎が「小説だってよ」と気取った態度で俺の言葉をまんまそいつに伝えた
つか何で標準語なんだこいつと思った記憶がある

「ふーん、ちょっと見ていい?」

待ちに待っていた言葉をそいつが発したので、俺は気を良くして「どうぞ」と答えた
確かこの時ボンちゃんは「あっいやっちょっと」みたいな事言ってた

俺の素晴らしい文章能力を見ればそんな生意気な態度は取れないだろう
信じて止まなかった

「えーある嫌味のように晴れ渡った朝のこと〜」
「ぇっ……!?」

まさか朗読されるとは思ってなかった
流石にちょっと恥ずかしいな……
大丈夫かなこいつ、俺の文章を読んで素晴らし過ぎて己の矮小さを恥じ自殺とかしないかな……

だが、当たり前の事だが、そんな期待はいとも容易く裏切られた
ろくに全部読みもせず、数枚だけ読んだ後奴らは急にゲラゲラ笑い始めた

「えーっなんこれキモッwwwwww」
「うわぁ……ドン引きだわ……www」
「嫌味のようにwww嫌味のようにwww」

当時の俺には予想外過ぎて思考がフリーズした
00661 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 03:12:53.64ID:AOHbu/mca
えっ何で?
どこがキモイの?どの辺りが?
確かに添削途中だけど基本的な物語は成り立ってる筈だよ?
混乱で今にも奇声をあげそうな俺の肩をポン、とヤンキーの一人が優しく叩いた

「何か知らんけどこれ応募するんやろ?……やめた方がいいよ……(笑)」
今にも笑いだしそうな顔でそう諭された

俺は混乱に怒りが加わって「は?は?うぇ?うぇ?」と結果奇声をあげた
見兼ねたボンちゃんが何かフォローの言葉を投げ掛けていたが何と言っていたかは覚えてない
なんせ俺はこの時「は?」と「うぇ?」しか喋れない猿になっていたから

その時、部屋の入口の方から聞き覚えのある声が聞こえた

「おースグルー、……と〇〇?(恐らくヤンキーの名前)」

振り返ったそこに立っていたのは向井だった
どうやら向井はこのヤンキーと友達らしく、俺は勝手に年上だと勘違いしていたがヤンキー達は俺と同学年らしい

「お、向井この子知っとん?この子小説書いとるらしいんよwww」
「うん、知っとうよ」

あれ?向井知ってたっけ?と一瞬思ったが、そう言えば夏休みに入る前に言った気がする
じゃあスポーツ遊びに誘うなよ

「あ知っとん?この子ちょっとアレやね…キモいねwww」
「は?」

向井は一瞬苛立っているように見えた
俺の為に怒ってるのか?それともただ単にキモイという単語が気に入らなかっただけなのか?
その時の俺は分からなかった
そんな向井の威圧も気にせずヤンキーはとんでもない事を言い出した

「あっそうや、これ俺が捨ててあげようか?」
00671 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 03:23:35.46ID:AOHbu/mca
「いや、え?いや、ダメです、やめて」
突然に突然が重なり過ぎて俺の思考は追いつかなかった
ただそれはやめて欲しいという事だけは感じた

ボンちゃんは流石にキレてた
普段あまり怒らないボンちゃんが必死に怒り顔をして「返して!」と言ってヤンキーに挑みかかろうとした
まあそれは他のヤンキー達に「まあまあ」と適当に押さえられてた

向井は「やめとけっちゃ……」と苦笑いしながらヤンキーのすぐ近くまで歩み寄ってた

肝心の俺はというと、意味不明すぎる展開にただ棒立ちだった


ヤンキーはそれをいい事に
「じゃあ、今からこの原稿を処分しまーすwwwwww」
と破る体勢に入った
ニヤニヤしながら俺の反応をうかがった
俺は流石にまずい!と思って「やめt」と取り返そうとしたが……
時すでに遅かった

俺が必死に、何日も掛けて書き進めた原稿は、突然現れたゴリゴリヤンキーの腕力によって一瞬にして

ビリビリという音とヤンキー達の笑い声と共に


破れ去った




と同時に、誰かの拳がヤンキーの顔面に物凄い勢いでめり込んだ
00681 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 03:31:34.31ID:AOHbu/mca
殴ったのは向井だった
あの時の顔は忘れられない
秒速30回は舌打ちしてそうな苛立ちの顔にとてつもない怒りを帯びていた

ヤンキーもまさか自分が殴られるとは思ってなかったんだろう
鳩が豆鉄砲を食らったような顔でほっぺた押さえて座り込んで向井を見てた
それに追い打ちとして向井は「ぶち殺すぞ」と言い放った

殴られてみんなポカン
あれ……?この光景どこかで……
俺はそんなクソどうでもいい事を思った

段々自分が何をされたのか理解したヤンキーは、「はぁああぁ!!!??」と馬鹿でかい雄叫びをあげて向井の胸ぐらを掴んだり原稿をさらにグシャグシャにしたり発狂してた

そのあと何やかんやゴタゴタがあったが、あまりに混沌とした中学生共の喧嘩なので割愛する

その喧嘩はヤンキーの声と騒ぎを聞いて駆けつけた市民センターのおばちゃんwithおじちゃんによって終息した
おばちゃん達の良心?によって各学校への連絡などは無しになった
俺の小説の件も話そうかと思ったが、ヤンキー達の酷評でショックを受けていた俺はそんな余裕も気力もなかった
00691 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 03:37:38.62ID:AOHbu/mca
ヤンキー達が先に帰らされ、おばちゃん達にはただの喧嘩として扱われ、この事件は終わった

そのあと市民センターが閉まるってんで俺達も帰らされる事になったが、ボンちゃんはギリギリまで俺の書いた原稿の欠片を必死に寄せ集めて俺に手渡してくれた
ボンちゃん確か泣いてた
何で泣いてたのか、今でも色々と考える

向井はその間ずっとブツブツ悪口を言いながら座ってた
俺は向井にお礼を言うべきだったのかもしれない
でも何故か言えなかった
何でだろうな

俺はヤンキー達からの小説の評価と、ヤンキーが帰り際最後に言い放った一言の事ばかり考えていた



「お前、マジで覚えとけよ。知らんけんな」
妙に引っかかっていた

俺の嫌な予感通りこの事件は、後の「あの事件」を起こす小さな引き金に過ぎなかったのだ……(流れるような次回への繋ぎ)
00701 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/19(火) 03:39:48.03ID:AOHbu/mca
10数レスしかしてないけどやっぱ疲れるわ……
まあまったりゆっくり書くつもりだから今日はここまでで……

自分語りって意外と記憶探ったり文章にまとめたりで消耗するんだな

また時間あったら書きますわ
ありがとうございました
0071名も無き被検体774号+ (ワッチョイWW 27e1-ayy1)
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2019/02/19(火) 22:06:48.89ID:T1jyBn3Z0
しえん
00731 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa1f-fSKW)
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2019/02/20(水) 06:49:23.21ID:EHV8lgcBa
支援タスカル
中々時間空かなくて日にち飛び飛びですまんこ
今日の深夜例によって突如書き始める
0074名も無き被検体774号+ (ワッチョイWW 27e1-ayy1)
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2019/02/20(水) 11:39:11.88ID:HyyiQQJf0
>>73
おー!
楽しみにまっとるよ!
00751 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-aV7y)
垢版 |
2019/02/21(木) 02:35:48.36ID:GdkEywIma
来た
毎度毎度深夜だから書き残す形になるけど書いてく
00761 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-aV7y)
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2019/02/21(木) 02:41:16.13ID:GdkEywIma
話は前回の続きからだな

俺はこの日を境に小説の続きを書くのをやめた
俺の文章への自信というものが完全に消え失せてしまったからだ
ボンちゃんがかき集めてまで俺に渡してくれたクシャクシャの原稿用紙は、引き出しの奥の奥にしまったまま夏休みの間取り出す事はなかった
それでも捨てる事が出来なかったのは、まだ微かに未練があったからかもしれない
まあだからといって新人賞に応募する勇気はもうなかったけども
00771 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-aV7y)
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2019/02/21(木) 02:51:38.81ID:GdkEywIma
俺はボンちゃんとよく遊ぶようになった
金があまりないから近くの公園で駄弁ったり、いつも通り市民センターで喋ったり、ボンちゃんの自転車に2ケツして割と遠くに行って喋ったり……

まあとりあえず喋ってた
インドア派の俺の限界である

まるで俺は諦めた夢から目をそらすように、他の楽しいことに専念するようになった
ただこの時気掛かりだったのは、俺がよく遊ぶようになったと同時に、今まであれだけ誘ってくれた向井からの誘いがパタリとなくなってしまった事だ

俺はそれを気にする度にあの言葉を思い出していた

「お前、覚えとけよ。知らんけんな」


まさか向井の身に何か起こっているのかもしれない
夏休みも終盤に差し掛かった頃、俺は向井の家に向かう事にした
00781 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
垢版 |
2019/02/21(木) 04:52:16.10ID:z13ORsO/a
……( ゚∀ ゚)ハッ!
寝落ちしてたつつ続きを書く

向井の家に着いてチャイムを鳴らすとお母さんが出てきた
「すいません、向井君居ますか」
ボンちゃんが割と大きな声でそう聞くと、お母さんが返事をする前に奥の方の廊下から向井が出てきた
顔中絆創膏とアザまみれだったのを覚えてる
その時歩き方が変だったから多分顔以外にも何かしらあったんだろう

「帰れ」

単刀直入にそう言われた
俺の予感は的中していた
だからこそ、誰にやられたのか、いつどこでやられたのかは分からないが俺は
「帰らん」
と毅然として言うべきだと思ったし、そう言った
00791 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/21(木) 04:57:54.30ID:z13ORsO/a
向井はため息をつくと何も言わずに奥に消えていった

「ごめんね、何か先週喧嘩して帰ってきてからよう分からんけど怒っとんよ。……おぉいアンタ!友達に帰れは無いやろ!……ごめんねぇ、悪いけど今日は多分あいつ出てこんけん、また近い内来ちゃらんかね?」

向井の代わりにお母さんは、こんなニュアンスの事を言って俺達を諭した
向井が喧嘩したのは先週だというのはハッキリ覚えてる
もっと早く来れば良かったと死ぬほど後悔したから
00801 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/21(木) 05:06:22.48ID:z13ORsO/a
一旦退こうというボンちゃんの提案で、俺達はすぐ近くの公園で作戦会議をする事にした

まずは向井と直接話さないと何も始まらない
じゃあ向井をどう家から引きずり出すか、それが問題だ

ああでもないこうでもないとかなり悩んだ末、またもボンちゃんの提案により、俺達は手紙を書いて向井のお母さんに「本人へ直接渡してくれ」と頼むことにした

これなら向井のお母さんにも迷惑が掛からないし、こちらの気持ちを向井本人に使えることが出来る
早速ボンちゃんが家からノートとペンを持ってきて、俺達は手紙に思いをぶつけることにした
00811 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/21(木) 05:17:38.50ID:z13ORsO/a
今現在、その手紙は俺が何やかんやあって持ってるので、ちょっとそのまま書く

「向井へ

出てこい。
俺がこのあいだ小説をビリビリに破られて、向井がヤンキーを殴ったけど、多分、それが原因だれかから暴力を振るわれたんやろ?
何で出てこんの?俺は1回直接会ってしっかりお礼と話を聞きたいし、ボンちゃんも心配しとる。
警察に言えば良いと思うし、ボンちゃんもそう思っとる。
とりあえず出て来ないと話にならないので出てきて下さい」

読み返すと謎に高圧的だし、この言い方だと俺がお礼を言われたいみたいになってるが、この手紙で俺の中学生の頃の語彙力を察してくれ

兎にも角にも、俺達はその手紙を向井のお母さんにに渡した
お母さんが嬉しそうな顔をしてたのを覚えてる
00821 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-aV7y)
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2019/02/21(木) 05:24:38.56ID:GdkEywIma
その次の日から、俺とボンちゃんは向井の家が目視出来る公園で遊ぶようになった

遊んでる途中に家から向井が出てくればそれを現場で拘束し、問いただす
言わば張り込みである
来る日も来る日もアメニモマケズカゼニモマケズ俺達はその公園で遊んだ
向井の家をチラチラと見ながら

そしてついに、もうすぐ始業式が来るくらいのギリギリの日に、俺達はついにその現場を押さえた
00831 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-aV7y)
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2019/02/21(木) 05:32:42.42ID:GdkEywIma
向井が俺達の気も知らずにポケットに手ぇ突っ込みながら外にブラブラと歩いていくのを目撃した

「ボンちゃんボンちゃん!あれ、向井やない?」
「あっ……あっホントや!行こ!」

向井の姿を確認するなり俺達は全速力で向井のもとに駆け出した
「おーい!向井くーん!!!」
ボンちゃんが走りながら大声で叫び掛けると、向井は一瞬だけこちらの顔を見てギョッとした後突然逃げ始めた

何故逃げる!

メタルスライムもビックリの逃げ足の速さで、向井の姿はどんどん遠くなっていく
流石サッカー部といったところだ
このままでは俺達の脚力では追いつけない
向井が角を曲がるのを見計らって、俺達はあわよくば先回りするつもりで別の方向へと走った
一度掴みかけたチャンスをこのまま易々と無駄にする事は出来ない
その一心で俺達は頭をフル回転させながら町中を動き回った
そしたら

「あっ」

いた
00841 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-aV7y)
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2019/02/21(木) 05:40:19.69ID:GdkEywIma
逃げ切ったと思っていたのか、歩きに変わっていた向井の姿をかなり近くで正面から捉えた
向井は急いでUターンしようとしたが時既にお寿司、俺達はやっとの思いで向井を拘束した

「何で逃げるんって!何があったん!誰にやられたん!?教えてくれんと分からんわ!」
今まで投げ掛けたかった質問が怒涛の勢いで口から溢れ出た
ボンちゃんに抱きつかれる形で身動きもままならなくなった向井は、それでもその問いに答えようとはしなかった

「ついてくんなちゃ!危ないやろ!」

……?
危ない?
何が…………?
俺とボンちゃんは意味不明な回答にアホ面で見合わせた


しばらく押問答を続けていると、奥の空き地から馬鹿でかい怒号が飛んできた

「おい!一人で来るっち言ったやろうがちゃ!くらすぞきさんコラァ!!」
00851 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-aV7y)
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2019/02/21(木) 05:42:40.39ID:GdkEywIma
OK,Google.

「おい!一人で来るっち言ったやろうがちゃ!くらすぞきさんコラァ!!」を日本語翻訳して♡



Googleさん
「おい!一人で来るって言ったでございましょ!ぶん殴ってやりますわよ貴様コラァ!!」
0086名も無き被検体774号+ (アウアウカー Sa55-p0Wu)
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2019/02/21(木) 05:48:06.84ID:24YkBkaLa
Googleちゃんw
00871 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-aV7y)
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2019/02/21(木) 05:51:02.28ID:GdkEywIma
見るとそこには、高校生くらいのいかにもなヤンキーが鬼の形相で立っていた
俺達はますます混乱に陥った

………………

ここでちょっと解説する
後々分かった事ではあるがこの状況に陥るまでの経緯を今話しておこう
流れとしては
向井がヤンキーを殴る

ヤンキーが自分のお兄ちゃんにそれをチクる

お兄ちゃんが向井をボッコボコにする

プライドの高い向井は警察にも親にもそれを言わず(親は察したみたいだが)、俺達を巻き込まないようにと暫く距離を置く事を決意

腹の虫が治まらない向井はヤンキー兄に「タイマンはろうや☆」とコンタクトをとる。

サシで勝負のはずなのに俺達も一緒に着いてきてヤンキー兄激おこプンプン丸←イマココ!
00881 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-aV7y)
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2019/02/21(木) 05:56:26.34ID:GdkEywIma
>>86
おぉっ!リアルタイムで見てくれてる人いるとは!



俺とボンちゃんはずっと混乱してたが、向井とヤンキー兄は既に戦闘モードに入っていた気がする
とりあえず俺が脳内コンピュータどだした結論は

「フタリ、キレテル。アブナイ。オレ、ムカイツレテ、ニゲル」

それだけだった

だから俺は引っ張って行こう!(?)と思って向井にしがみついた
ボンちゃんもつられて向井にしがみついた
だかその行動は向井の動きを封じ、ヤンキー兄の一方的な暴力に加担することになった

ヤンキー兄は躊躇なく向井の顔をぶん殴った
凄い勢いとガォンという音と共に、俺達は3人まとめて別方向に仰け反った
まるでコントである
00891 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-aV7y)
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2019/02/21(木) 06:02:36.70ID:GdkEywIma
向井が顎をガクガク言わせて絶句してたのを覚えてる

あぁ分かるぅ、それ痛いよね。わかるぅ〜
とJK並の感想を抱きつつ俺は向井に駆け寄ろうとした
だが向井はそんないたいけな俺を突き飛ばした
もうやる気満々らしい

向井はやたら大振りにヤンキー兄に殴り掛かったが、避けられて腹パンされたりしてた
本気の腹パン食らったことある人なら分かると思うけど、不良漫画みたいに何度殴られても殴り返すなんてのは素人、それもただの中学生には到底不可能だ

腹パンってマジで痛いんだぞ
たった一発で、それまで滾りまくっていた戦意がスっと消え失せる
そんくらい痛いんだマジで
そしてそんな腹パンを向井は食らったんだ

俺はキモイ奇声を上げながらブチ切れた
00901 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/21(木) 06:12:27.08ID:z13ORsO/a
腹パンと顎パンはマジで痛い
それを知っていた俺だから、多分その場の誰よりもブチ切れてた

俺の為にヤンキーに拳を向けた向井の怒りより
そんなに関わりの無い友達を本気で心配してくれるボンちゃんの優しさより
ましてやただ殴る事だけが生き甲斐ですみたいなお遊び感覚のふざけたヤンキー兄より
俺が一番感情を昂らせていた自信がある


俺は無我夢中で泣き喚きながらヤンキー兄に掴みかかった
運良く俺はヤンキー兄の懐に潜り込めた
抱きつくような形で俺はヤンキー兄を押し倒した
何でガリガリの俺がこんなイカついヤンキーを押し倒せたのかは分からない
火事場の馬鹿力ってやつなのか、それともただ単にコケただけなのか、とにかく俺達はその場に倒れ込む形で崩れ落ちた

ヤンキー兄は余った両手で俺の背中を執拗に殴り続けた
背中は殴られると息が出来なくなる
だが体勢の関係でそこまで力は強くなかった


何より俺は痛みに耐性がある
00911 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/21(木) 06:20:05.92ID:z13ORsO/a
俺はずっと泣きながらヤンキー兄の顔を掴んで言葉にならない声をあげていた
今にもごっつんこしそうな至近距離で、そいつの両眼を噛み付く勢いでのぞき込みながら

この時に向井とボンちゃんはどうしてたのか分からない
目の前の人間に対してしか意識がなかった

俺が最初に逃げようと思ったのは、俺じゃこいつには決して勝てないと思ったからだ
でも掴みかかった瞬間から考えは逆転した
こいつじゃ俺には勝てない、決して
ただ暴力をふるうだけの、獣とさして変わらないようなこいつじゃ、俺には何が起ころうとも絶対に勝てない

ずっと威嚇し続けた
この時俺は殴ろうと思えば殴れたのかもしれない
向井が俺と同じ状況なら絶対に殴っていた
でも俺は絶対に殴りたくなかった

俺の強さのか弱さなのか、殴るという発想はこの時全く持っていなかった
00921 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/21(木) 06:27:27.58ID:z13ORsO/a
どれくらい時間が経ったか分からない
ヤンキー兄に馬乗りにっていた俺の膝元に何か温かい感覚が伝わってきた

見ると、そこには液体が流れていた
え?血?もしかして知らない内に俺は殴っていた?
それとも誰かがナイフで刺した?
だがそれにしてはあまり赤黒くない
いや、というより全然色がない
何だこれ
雨?いや、雨じゃない
雨は降っていない

俺はふとヤンキー兄の放心したような顔を見て、やっと気付いた


こ れ は お し っ こ だ
00931 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/21(木) 06:37:27.72ID:z13ORsO/a
どうやらヤンキー兄が漏らしたものらしい
ヤンキー兄は怒りとも悲しみとも恥じらいともとれるような顔でこちらから目を逸らしていた

急に熱が冷めた

ずっと我慢してたのか、キチガイに絡まれビビってチビったのか、ヤンキー兄はナイアガラの滝のようなおしっこを辺り一面に広げていった

この瞬間から俺は怒りよりもまず先に「きったね」という感情でいっぱいだった

俺はよろよろと立ち上がって向井とボンちゃんに

「おしっこや」

と迫真の真顔で伝えた
二人はドン引きで「う、うん」と答えてたと思う
洗わなきゃ、拭かなきゃ
そう思った俺はとりあえずおしっこで濡れたズボンをどうにかしたいという旨を二人に話した
どちらも快く了承してくれて、その場を後にしようという事になった

俺が立ち上がってからその場を後にするまで、ヤンキー兄はずっと動かなかった
高校生にもなっておしっこをしてしまう恥ずかしさから悟りをひらいてしまったのかもしれない


俺達は近所の牛丼屋に入り、俺がトイレでズボンを拭きまくった
トイレから帰ると向井の奢りで牛丼を食った記憶がある
最初の内は三人とも映画を見終わったような気分で放心していたが、牛丼を食っているうちに段々現実に引き戻された感があって少しずつさっきの事件の話を振り返り始めた
00941 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/21(木) 06:41:54.00ID:z13ORsO/a
この時からだろう
ボンちゃんと俺
俺と向井
みたいな一本線の関係じゃなく

ボンちゃんと、俺と、向井

そんな輪っかみたいな関係になったのは
「三人」として友達になった初めての日だったのだと思う



それから数日間、ヤンキー兄からの報復にビクビクしていた俺達だったが、何故かそれ以来まるで何もなかったかのように平穏が続いた
あちらの事情で何があったのかは分からないが、とりあえず俺は「おしっこをしたのがよっぽど恥ずかしかったから」だと思うようにしてる

この一連の事件をきっかけに俺がある「決意」をしたのはまたあとのお話……

俺達は残りの短い夏休みを3人で遊びながら過ごすのでした

でめたしでめたし
00951 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/21(木) 06:44:25.05ID:z13ORsO/a
とまぁこれが中二の夏休みの出来事
これまでの出来事は暴力が絡んでくる事が多かったが、これより後の出来事はちょっと方向性が変わってくる

まあ今日は疲れたのでまた例によって時間ある時に続きを……

次回!王に俺はなる!

といったところでさようなら
また近い内来ます
0097名も無き被検体774号+ (アウアウカー Sa55-p0Wu)
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2019/02/21(木) 12:36:42.54ID:NFZqDot5a
おもしろい
続き待っとるよー
0098名も無き被検体774号+ (ワッチョイW 799b-yExE)
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2019/02/22(金) 01:25:15.66ID:H/7tWajy0
おもしろい!しえん
0099名も無き被検体774号+ (ワッチョイWW a9e1-p0Wu)
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2019/02/22(金) 19:28:34.11ID:c4lFtEDa0
1さん今夜はきてくれるかなー
01011 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 02:42:48.70ID:Fz+HjoM2a
キタ
カク

まとめサイトの管理人さん居りましたらまだ終わってないのでよろしくお願いしますナンツッテ
根気勝負になります
01021 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 02:49:00.92ID:Fz+HjoM2a
さてさて、夏休みも無事終わり二学期に突入した頃、俺はある決意をした

というのも今回の騒動、元はと言えばヤンキーに原稿用紙を破られたのがそもそもの原因であり、もっと言えばヤンキーにそんなふうに絡まれてしまう俺の性格に原因があるという事になる

毎度毎度誰かがヒーローのように助けてくれるとは限らないし、助けてくれたとしても俺がこのままであり続ける限り何度でもこんな事件は起きる

原因を断ち切るには、俺がしっかりしないといけないのだ

そんなふうに考えた俺は、誰からもナメられないような人間になる事を決めたのだ


……とは言え性格なんてのはそう簡単に変えられるものではない
考えた末に俺が出した結論は、性格ではなく肩書きで周囲を圧倒し萎縮させてやろうと思った
要するに俺は


生徒会長になろうとした
0103名も無き被検体774号+ (ワッチョイWW 6612-LvDS)
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2019/02/23(土) 02:56:34.72ID:1OJMQMtm0
わくわく
01041 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 02:59:55.01ID:Fz+HjoM2a
どこも同じなのかは知らないが、うちの中学は秋頃に選挙活動を初め、大体初冬に選挙があり三学期から生徒会就任って流れだった……気がする
あんまり細かな時期は覚えてない

2年生だった俺はタイミング的にも生徒会長を狙いやすい時期だとお思いだろうか
だが、現実は全く違う

そもそも生徒会なんてのは一年生の冬にまず何らかの役職(書記委員とか副会長とか)に立候補し、二年生でそれに就任
そして二年の冬、エスカレーター式にその役職の1ランク上(風紀委員とか会長)に立候補し、当選
この流れが普通である

生徒会長は前の代で副会長を務めた者が成り上がるのが普通であり、実際わざわざその流れに割って入ろうなどと思う者は居ない

俺はもちろん生徒会に入っていなかったので、入るとしたら唯一各学年で一人づつ就任可能な副会長あたりが妥当である
というか実質ここしか割り込みで入れる空き枠がない

だがしかし、それでは駄目なのだ
どうせなるならトップオブトップ、生徒会長じゃなきゃやだやだやだ

俺はある日のホームルームで生徒会長に立候補した
01051 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 03:11:07.78ID:Fz+HjoM2a
もちろん周りからは散々罵声を浴びた

「は?お前何いいよん?」
「調子乗んなやお前」

周りの生徒からの非難の雨など俺には十分予想出来ていた事だ
だが、意外な事に肯定したり面白がる声もあった
単に物珍しさでちょっと乗っかってやろうという気持ちもあったのかもしれないが、当時の俺は「イジメられっ子」というより「いじられっ子」と言った方が妥当なポジションだった
なので全員から絶対的に嫌われている訳じゃなく、ちょっと頭のおかしい変な子だと思っている層もチラホラいた

賛成派も多かったのは好都合だ
選挙は校内生徒の清き一票によって勝敗が決まる
全くのアウェーから開始ではなかったことに安堵した

しかしその罵声の嵐の中、引っかかる言葉もあった

「後藤に悪いと思わんのかちゃ」

後藤と言うのは昨年副会長を務め、所属するバスケ部でも県大会に出場するなどの好成績をおさめたスポーツマン優等生
勉強面は並よりちょっと上くらいだが、特に人格者という訳でもないがこれといって性格に難がある訳でもない為、無難に信頼を得ている人物だ

確かに割って入るのは悪いと思う
だが規則に「いきなり生徒会長になってはならない」などといったものは無い
少し心が痛んだが、俺にとってはわずかな犠牲だと自分に言い聞かせた
01061 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 03:22:12.11ID:Fz+HjoM2a
立候補の手続きを済ませるため俺は、助っ人を探した
というのもウチは、立候補するために選挙活動をサポートする相棒みたいなのが一人要るのだ
正式な名前があった気がするけど思い出せないので助っ人と書く

当初俺はボンちゃんか向井に頼むつもりだった
と言っても向井は恐らく断るだろう
奴は表に立って目立つというのを嫌うタイプだ
ましてや俺みたいないじられっ子のサポートをしてます!というのを全校生徒に公表するのは嫌うだろう
優しい奴だが世間体みたいなのは気にするのだ

だから俺はノータイムでOKしてくれそうなボンちゃんの元に行った
しかしその途中、予想もしない人物から声を掛けられる事になった

「スグル生徒会長になるんやろ?俺が助っ人しちゃろうか?」

声を掛けたのは中本という奴
ライバルの後藤と同じバスケ部で、ちょっと頭のおかしい奴だった
いや、もう後藤と同じ部活なのに俺にそんな提案してくる時点で頭がおかしいのは分かると思うが
こいつは面白い事に積極的に関わってくるタイプだ
おそらく興味本位での提案だったんだろう

俺は少し考えたが、これは願ってもないチャンスだと思いお願いする事にした
もし中本が助っ人になれば、バスケ部内が後藤派と俺派に別れるかもしれない
向こうのホームを侵食できれば勝利に大きく近付く
01071 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 03:29:27.18ID:Fz+HjoM2a
手続きをした翌日から、俺立候補の噂は同学年に瞬く間に広がって行った

俺といういじられキャラがまさかの生徒会長!?
廊下を歩く度に俺は様々な反応を投げられた
嘲笑う者、興味津々に話し掛けて来る者、敵意を向ける者、応援してくれる者……

俺は自分の知名度に驚いた
いや、流石に二年も学校にいたら同学年なら誰もが知ってはいるだろうが、いじられキャラって見方を変えれば愛されキャラでもあるんだなと思った
体感ではけっこう肯定的な反応が多かったような気がしないでもない

気を良くした俺は、早速その日の放課後から選挙活動に励む事にした

まず取り掛かるべきは『自分のポスター作り』だ
01081 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 03:36:07.13ID:Fz+HjoM2a
俺は中本と何故かついてきたボンちゃんの3人で、美術室に向かっていった

例年、この学校の生徒会立候補者は自分のポスターを美術部に依頼する
手作りでやる人も居るには居たらしいが、少しでもクオリティを高くして見栄えを良くする為には、そっちの方が無難だ
美術部は女子生徒のみで構成されていて、立候補者はその女子達に媚びへつらいながら何とかポスター作りをしてもらおうと懇願するのだ

ところで、俺はドキドキしていた
選挙活動を実際に始めたからではない
美術部の中には俺が当時気になっていた女の子「尾上」さんがいたからだ
尾上さんにポスター作りを依頼して、あわよくばそれがきっかけで仲良くなってそれで最終的に……ムフフ
と実現しないであろう妄想に浸りながら俺達は美術室に到着した
01091 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 03:43:33.57ID:Fz+HjoM2a
「ごめんくださーい……」

ゆっくりと扉を開けると、そこはまさに女子の秘密の花園、当時の俺には楽園とも言うべき光景が広がっていた

「あっスグルやーん!ポスター?」
クラスメイトの名前も覚えてない女子が、俺を見るなり好奇心100%といった顔で近付いてきた

「あぁ、うん」
そうだけど貴様に用はない、失せるがいい
俺はその子の顔を一瞥すると、部屋の中をキョロキョロと見渡した
尾上さん尾上さん尾上さん……

いた!

尾上さんはどうやら後輩に、「あれが噂の痛い子よプププ」みたいな感じでこちらを嘲笑しながら話していた
だが俺にはMの気質があるので、興奮しながら尾上さんにズカズカと近寄った
若干引きながらこちらを見上げる尾上さんに俺は言った

「ポスター、作ってくr」
「ごめん今他の人の作りよるけん他当たって」

若干食い気味に断られたのを今でも覚えている
相当ショックだった
何がショックだったってよく見たら尾上さんが作っていたのは

後藤のポスターだった
01101 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 03:46:57.55ID:Fz+HjoM2a
後藤許すまじ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


思い出したら何かすごい腹立ってきた
何でよりによって後藤なのか
俺はこの瞬間、生徒会長になる目的が
「ナメられないようになるため」から
「後藤を完膚なきまでに叩きのめして靴舐めさせながらヒィヒィ言わせて謝らせ尾上さんに振り返って貰う事」にすり替わった

今振り返ればとんでもない逆恨み
逆ギレもいいとこである
01111 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 03:50:48.38ID:Fz+HjoM2a
結局俺は、最初に好奇心で近寄ってきてくれた名前の分からない女子にポスターを頼む事にした
どんな構図が良いか、謳い文句は何にするか、色々注文している間も俺は上の空だったと思う
帰る途中、ボンちゃんになんか言われて慰められた気がする
中本は終始ヘラヘラ笑ってた

とりあえずポスター作りはこれで問題ない


次に取り掛かるべきは、『生徒への根回し』だ
01121 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 04:01:38.53ID:Fz+HjoM2a
俺はこの頃からコミュ障を発症しつつあったので、知らない人にいきなり投票をお願いするのは気が引けていた
ボンちゃんは人当たりがよく割と人間関係も広いため、この活動の大部分をボンちゃんにお願いした

しかし俺もただ単に恥ずかしさで自分から投票を募らなかった訳では無い
こういうのは自分で言うよりも、周囲の人間が宣伝する事によって「信頼のある人間なんだ」とみんなを錯覚させられるだろうと、俺なりに考えた結果でもある

ある日の昼休みに廊下を歩いていると、一年生の見知らぬ団体から声を掛けられた
「スグル君っすよね!?俺ら投票するんで頑張って下さい!」

君達は誰だねとキョドりながら問うたところ、サッカー部の部員らしい
どうやら向井はひっそりと陰でサッカー部内で宣伝してくれていたらしい
良い奴やんけほんまお前

自分の直接の後輩なら宣伝しやすかったんだろう
だがこれは相当な効力がある
なぜかというと、現生徒会で部活に入っている生徒の中に「サッカー部」に所属している人間は一人もいない
そして学生というのは往々にして
「野球部」「サッカー部」「バスケ部」に謎の信頼がある
その三大イケてる部活の一つを完全に掌握したと言っても過言ではない

誰の息のかかっていない部活を一つ勝ち取れた事を知った瞬間だった
01131 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 04:05:23.66ID:Fz+HjoM2a
この時、俺は一つのアイデアが浮かんだ

そうだ
全部活の部長に投票を頼んで回った方が、虱潰しに行くよりよっぽど効率的ではなかろうか?

思い立ったが吉日、俺は一日ずつ色んな部活に顔を出してまわることにした
以下、おぼろげな記憶による選挙活動奮闘記である
0114名も無き被検体774号+ (ワッチョイWW 6612-LvDS)
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2019/02/23(土) 04:08:55.46ID:1OJMQMtm0
面白い。
向井が1番イケメンだね!
01151 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 04:19:25.50ID:Fz+HjoM2a
No.1「ボランティア部」

まず初めに手を付けたいと思ったのがこの部活だ
理由は2つある
地味でありながらも十数人とそこそこの部員がいる事
コミュ障の俺でもなんか話しかけやすそうな雰囲気だという事

俺は放課後、職員室前の廊下でジョウロに水を入れている同クラスの遠藤くんに声を掛けた

「えーんどーうくーん」

「………………えっ何?俺?おースグル君やん、どうしたん?」

「俺今ちょっと選挙活動して回りよんやけど」

「……あーね、なる。いいよ、俺入れるよ、どっちでも良いし」

「えっホントに!?」

察しが良すぎる遠藤くんは何も言ってないのに了承してくれた
どっちでも良いというのが引っかかったが入れてくれるのなら有難い
俺は調子に乗って駄目押しした

「ありがとう!……でさ、部活の人にも言って欲しいんよね」

「あー、うん、OKOK言っとく言っとく」

どこかで聞いた事がある
人が同じ言葉を2回繰り返した時は嘘をついている可能性が高いと
だがまあOKしてくれてるのだから疑ってもしょうがない
俺はひとまずの収穫に満足し、次の部活を考えた
01161 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 04:31:13.74ID:Fz+HjoM2a
No.2「囲碁将棋部」

誰も足を踏み入れないような別棟の一階奥、そこにひっそりと活動を続けるのがこの部活だ
ここを選んだ理由は上記のボランティア部と全く同じである
だが、ボランティア部の場合は誰か一人になった隙を見て話し掛けられるがここはそうはいかない
皆一つの部屋にまとまって、静寂の中黙々と碁石や駒をパチンパチンいわせているのだ
俺は部室の前に立つとパチンパチン音がある程度無くなり、談笑が聞こえ始めたタイミングでそろりと戸を開けた

「失礼しまーす……」

「?」
「?」
「?」

みんなの視線が一斉にこちらに集中した
全員が一様に「誰だこいつ?」といった顔でただ俺の顔を見つめた
しかも誰も口を開かない、俺の次の挙動を待つのみである

こんちくしょう!コミュ障らめ!なんか言えや!
とコミュ障の俺は思った

「えっと、今年生徒会長に立候補するスグルと申します。選挙活動に参りました……」

言い切ってから結構な時間が経った気がする
それとも俺がそう感じただけなのか
奥に座る部長らしき男子生徒の笑い声でこの沈黙は絶たれた

「はっはっはっはっはっ」

清々しい、嫌味のない笑い声だった
01171 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 04:37:32.23ID:Fz+HjoM2a
「いやスグル君ね。知ってるよ、突然生徒会長になろうとしてる子がいるって話は聞いてた。おいでおいで」

俺は言われるがまま、そろそろと奥に歩いていった
この時も周りはみんな俺に注目していた

「はい……」

「よし、じゃあ将棋しよう。ルールは知ってる?」

「は?」

突然の提案だった
この時はマジでびびり過ぎて、素で「は?」って言ったのを覚えている
だが俺は将棋のルールを知っていた
そしてそれを反射的に「知ってます」と答えてしまった

「よし、じゃあ今から君と僕が将棋をして、それで僕が投票するかしないか決めよう」

この部長の仰々しい、芝居がかった物言いは脚色ではない
マジでこんな喋り方だった
何かの漫画に影響されたのかは知らないが、だけどもとてもこの喋りが似合う雰囲気だった
俺はその世界観に押されて、何故か「分かりました……」と答えてしまった

ルールは知ってるが、ルールを知っているだけの俺が勝てるはずないのにも関わらず
01181 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 04:44:32.64ID:Fz+HjoM2a
俺は「角の斜め上の歩を上げて、攻める」
それだけ考えて打ち始めた

自分の具体的な打ち方はよく覚えてないが、この時の部長は今思えば「早石田」っていう戦法を使ってた気がする
将棋を知らない人に説明すると、早石田は奇襲戦法というものに近い
ボクシングだっつってんのにいきなりスネを蹴られるあの感じ、というと棋士の人に怒られるかもしれないが、感覚としては本当にそれに近い

結果、対処をミスった俺の飛車側はみるみるうちに崩れていき、一瞬でガタガタの陣地になった
もうこの時点で中学生の俺にはほぼ負けだったが、何としてでも勝ちたいという一心で必死に食らいついた

相手が隙を見せた所で、守りも捨ててひたすら攻める
それを繰り返した



繰り返した結果、負けた
01191 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 04:50:53.62ID:Fz+HjoM2a
俺は悔しくて、今にも泣きそうになった
部長はさぞ満足そうに
「ありがとうございました」と言い放った

俺も「あでぃがどぅごだいまじだ」と半泣きで答えた
だが、次の部長の発言で俺は良い意味で予想を裏切られた

「よし、僕は君に投票するよ」

キョトンとした
え?負けたのに?

「君の打ち方は面白かった。指していてとても楽しかったよ。それに僕は『負けたら投票する』なんて一言も言っていない。『将棋をして、投票するかしないかを決める』と言ったんだ」

そんなふうな事をドヤ顔で口走りやがった
多分このセリフは漫画かなんかの受け売りだろう
流石に中学生の言い回しではない
でも当時の俺は不覚にも「やだ……カッコイイ」と思ってしまった
囲碁将棋部入ったろかなとさえ思っていた
それくらいかっこよかった

俺は何度もお礼を言ったあと、その部室を去った

部長のファンになりつつあった俺は気を取り直して、明日はどの部に行くかを考えたのだった
01201 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 05:05:35.23ID:Fz+HjoM2a
No.3「吹奏楽部」

前回の一件で段々選挙活動が楽しくなってきた俺は、いよいよ文化部の花形、吹奏楽部に突撃訪問する事にした
ちなみにうちの学校は吹奏楽とは名ばかりで、やる楽器はリコーダー、木管、金管くらいだった気がする

まあそれはそれとして、音楽室へ向かう途中に俺はボンちゃんと鉢合わせた
選挙活動をしていると伝えると、ボンちゃんはノリノリで付いてきた
到着すると丁度休憩タイムだったのかいつもこうなのか知らんが、生徒達で談笑しているところだった

「失礼しまーす!選挙活動しに参りました!」

俺がものを言う前にボンちゃんが大声でそれに割って入った
生徒は談笑をやめ、こちらを見るなり目をキラキラさせながら笑顔に変わった
あれ?もしかして俺って人気者?

「ボンちゃーーーーん!!!!!」

そっちか

同学年の女子生徒と、後輩の女子男子混合、皆がボンちゃんの元に走り寄った
どうやらボンちゃんこの後輩の子達と仲良くしてるらしい
みんなすごく優しそうな子だった
抱きついて来たりして、たまに遊びに来る叔父と姪っ子みたいだなと思った記憶がある

「遊びに来たよー」

まあ遊びに来たわけではないんですけどね

ここでは暫くボンちゃんと一緒にくっちゃべっていた
結果的に俺は自分で宣伝する間もなく、ボンちゃんの信頼力によって清き一票を勝ち取れる事となった
やっぱボンちゃんってすげぇや
01211 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 05:08:59.26ID:Fz+HjoM2a
最初の3つの順番は覚えてるけど後の順番忘れちまった
という事で次回から順不同で書いてく
覚えてないのもあるから
文化部一番の問題児「パソコン部」
宿命の運動部「柔道部」
鬼顧問の鬼門「野球部」
の3つを書いてく

では、後編へー続く
といったところで今日は終わりやす
見てくれた人ありがとうございました
また来る
01221 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-aV7y)
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2019/02/23(土) 05:15:07.95ID:Fz+HjoM2a
あっ誤字あったわ

>>104でワンランク上の役職に風紀委員とあるが、これは「書記委員長」の間違いだ

要するに「委員」から「委員長」に成り上がるって事が言いたかった
以上
0123名も無き被検体774号+ (ワッチョイWW a9e1-p0Wu)
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2019/02/23(土) 07:13:59.03ID:dra/iqwM0
相変わらず面白いー!
また続きまっとるよ
0126名も無き被検体774号+ (ワッチョイW 7dfe-U0yH)
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2019/02/24(日) 13:36:47.54ID:4lMYvCRd0
はよ
01271 ◆S3NdI8XwYo (アウアウウー Sa21-vz6I)
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2019/02/24(日) 16:42:54.73ID:snchZoTDa
キョウ、ヨル、オレ、クル
0128名も無き被検体774号+ (ワッチョイWW a9e1-p0Wu)
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2019/02/24(日) 21:10:58.43ID:flmWUlC+0
きたーーー!
たぶん起きてられないから明日みるよ!
楽しみにしてます!!
01291 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-vz6I)
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2019/02/25(月) 03:32:15.71ID:VkGQk/U8a
ありがでぇ……あぁありがてぇ……

じゃあ書き始める
01301 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-vz6I)
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2019/02/25(月) 04:08:28.76ID:VkGQk/U8a
ちょっと記憶を辿ってまとめてた
では行く

No.4「パソコン部」
パソコン部と名前だけ聞くと、眼鏡かけたガリ勉の陰の者達がカタカタキーボードのタイピング練習をしている光景を思い浮かべるかもしれない
確かにそういう人間も部員には存在する

だがしかし、うちの中学のパソコン部はかなり異質なもので、ヤンキーと陰キャと陽の者が混在するカオスな部活なのである
これにはパソコン部の活動内容が関係している
大体ここは顧問の先生がホワイトボードに
「今日の活動:タイピング」
などと殴り書いて生徒諸君に活動を丸投げし、「何かあったら呼んでね」とほざいた後自分は職員室に帰って職務放棄してしまうのが問題なのだ

これのせいで、パソコン部員達の殆どはセーフティの掛かっていないサイトを巡回したり、こっそり持ってきたゲーム機などで遊んだりしてしまうのが代々受け継がれる伝統になってしまっている
01311 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-vz6I)
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2019/02/25(月) 04:19:05.78ID:VkGQk/U8a
そして俺はそんな混沌とした部室に、投票を頼みに行こうとしていたのだ
緊張で歯をガチガチ言わせながら、俺はパソコン部の扉を開いた

「うぉっ……!!……びびらせんなや!先生かと思ったやねぇかちゃ!」

開くなりヤンキーの罵声が飛んできた
俺はひとまず謝罪して、陽の者とヤンキーが騒ぎ立てる中、本題に入った
本当は静かになってから言いたい気持ちもあったが、この方々はどんな状況でも決して黙らないと悟っていた為やむを得なかった

「生徒会選挙の活動に来ました。投票をお願いします」
「えーじゃあ何か一発ギャグやってー」

……
…………こうなる事は分かっていた
だからここに来るのを躊躇っていたんだ
陽の者とは言っても中学生、まだ何でもかんでも無茶振りすれば面白いと思っているクソめんどくさい時期だ
俺もいじめられっ子からいじられっ子に昇格してからは何度もこんな場面にあった

だがこうなる事が分かっていたということは、こちらに準備があるということだ
ここで簡単に引き下がると思うなよ陽キャ共
数々の羞恥プレイを受けてきた俺は「えっそんな、ちょっ、恥ずかしい/////」などとイモを引くようなヤワなメンタルはしていない

俺は渾身の一発ギャグ(氷川きよしのモノマネ)を披露した
01321 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-vz6I)
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2019/02/25(月) 04:26:16.64ID:VkGQk/U8a
「は?おもんな」

ヤンキーは間髪入れずに反応した
まあそうだろうそう言うだろうよ
例え面白かったとしても、俺みたいな奴には口が裂けても面白いなどいった発言はしないだろう
ヤンキーの反応などどうでもいい
問題は陽キャの反応だ

「おもんな」

おもんなかったらしい
おもんなかったならしょうがない
ここはひとまず一度撤退……


すると思うなよ陽キャ共
数々の羞恥プレイを受けてきた俺は「えっそんな、ごめん、おもんなかった……?」などとイモを引くようなヤワなメンタルはしていない

「えー続きまして……」

ギャグをひとつしか用意してなかった俺は、その場でハイスピードでギャグを考えては一瞬の隙も与えず何発も芸を披露した
色々やったが唯一覚えているのは「卓球の試合をしている途中でいきなり旅館の女将になる」というものだ
めちゃめちゃ面白いので皆にも見てもらいたいくらいだ
01331 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-vz6I)
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2019/02/25(月) 04:32:16.83ID:VkGQk/U8a
結果的に大爆笑、とまではいかないが段々と会場も盛り上がって参りました
その後、後輩も見ているなか油性のマジックで身体に落書きされたり、ヤンキーにスネを蹴られたりした記憶があるが、大体の人間が俺に投票する事を約束してくれた

一番収穫があったと感じたのは、ヤンキーにも最終的に好感触で終われた事だ
ちなみにこのヤンキーは一個学年が上だったのだが、この成果が後で重要な役割を果たすことになる

まあつまり小さな代償も払ったが結果は上々だった、という事だ
01341 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-vz6I)
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2019/02/25(月) 04:37:36.26ID:VkGQk/U8a
No.5「柔道部」

前回話したが、生徒会は基本的に役職がエスカレーター式で上がっていく
今年保健委員だった者は今回の選挙で保健委員長になるのだ
つまり、俺が敵と見なすべきは何も後藤だけではない
今年一年間を後藤と一緒に過ごした、俺と同学年の4名の委員
「風紀委員」
「書記委員」
「生活委員」
「保健委員」
も同時に、俺に生徒会長になって欲しくないという絶対的な「後藤側」の人間なのだ

そして今回赴く柔道部は、その内の「書記委員」と「風紀委員」が所属している
自ら敵地に推参するのは途方もない勇気が必要だっただろう
当時の俺を褒めてやりたい
褒めてぺろぺろしてやりたい
01351 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-vz6I)
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2019/02/25(月) 04:50:07.00ID:VkGQk/U8a
武道場の玄関を入ってすぐ、そこに柔道部の活動場所がある
俺はそーっとそこを入り、顧問の小太りで強面のプーさんみたいな先生に軽く会釈をしてから休憩時間を待った
プーさんは怪訝そうな顔で会釈し返してくれた気がする

俺の存在に途中から気付いていたのか、休憩に入るなりすぐに風紀委員の奴が俺に近付いてきて言った

「なんか(半ギレ)」

やだ初っ端からすごい喧嘩腰
だがここで怖気付いてはいけない
努めて冷静で紳士的に俺は返事をした

「選挙活動に来たんやけど?(半ギレ)」

言った後、俺はプーさんに許可を取ってから柔道部の全員に俺の生徒会長への意気込みを語った

全員微妙な空気で聞いていた
それも仕方ない、何しろ一年生にとっては先輩の意見は絶対
その先輩が二人も後藤側なのだから、俺の話を聞くこと事態がいたたまれない気持ちだっただろう

しかし俺はもちろん、ハナから同学年に向けて喋ってなどいない
俺はその運動部の上下関係に辟易しているであろう後輩達に向けて語っていたのだ
01361 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-vz6I)
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2019/02/25(月) 05:21:00.50ID:VkGQk/U8a
同学年の生徒には何をどう言おうともこちらに寝返るのは無理だと俺は思った
だから少しでも票数をバラつかせる為に、ちょっとした内乱でも起こしてやろうという気持ちでこの部に赴いたのだ

「俺は選挙は公平であるべきだと思っています。
誰かに言われたからこうする、先輩があちらだから自分もあちら……それは間違っていると思います。
確かに年上の意見を尊重し、命令通りに行動するのは組織としては正しいかも知れません。
楽かも知れません。
でも、それはあくまで組織としての正しさであって、何もかもにそれが適用される訳では無いです。
こと選挙においては、一人一人がどう思ったか、自分がどっちに投票したいのか、それだけが大事です。
どうか皆さんは、他の誰かに振り回されることなく、自分自身で判断して下さい。
その結果俺が負けるのならそれは構いません。
俺は正々堂々と勝負がしたいです。以上です。
ありがとうございました。」

一語一句違わずこう言った訳では無いが、内容としては概ねこんな感じの内容でスピーチした
コソコソと各部活に根回ししている俺が正々堂々とは大ホラ吹きもいいとこである
俺はその同学年への敵意むき出しのスピーチをドヤ顔で終えたあと、その場を去ったのだった
01371 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-vz6I)
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2019/02/25(月) 05:32:07.64ID:VkGQk/U8a
No.6「野球部」

俺が、一番重要であり何が何でもここだけは行かねばと思っていた部活
それがこの野球部だ
理由は一つだけ
この部活には現生徒会長が所属している、それだけだ

最近生徒会長になる事を一念発起した俺には、現生徒会長がどんな人なのかも全く知らなかった
故に俺はここに来る前に出来るだけ現生徒会長の性格なり行動なりを色んな人から情報収集していた

その結果、彼について分かったことは
・真面目で寡黙な人間
・勉強の成績は並かそれより少し上
・自ら何かを起こす事はあまりないが、問題事には積極的に関与し平和的解決を図る
・めっちゃスポーツマン

以上だ

俺はこの三点目に注目した
会長という立場もあり平和的解決を至上とする彼ならば、俺がいきなり部活に突撃訪問してもあからさまに敵意を向けることはないだろう
それどころか快く迎え入れてくれるかもしれない

俺はそこそこの時間をかけてそう思うに至った末、ついにこの野球部へ自らを売り込む決意を固めた
01381 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-vz6I)
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2019/02/25(月) 05:42:06.20ID:VkGQk/U8a
放課後、部活動がある生徒以外はとっくに下校した時間帯を見計らって俺はグラウンドへ向かった

何やら大声で顧問の先生が生徒に指示をしている
遠くからでも分かる馬鹿でかい声だ
多分240デシベルはある

俺はその指導が切れるタイミングでこっそり後ろから話し掛けた

「あのー……」
「んっ!?何?!!!!!どうした!!!!!?」

めっちゃ近いのにクソでかい声
こういうタイプに弱い俺は、中学生なりにかなり言葉を選んで丁寧かつ失礼のないように自己紹介と目的を伝えた

「今年の生徒会選挙で生徒会長に立候補したスグルという者です。選挙活動に参りました。
もし宜しければお時間頂いてもいいですか」

「あぁ!!!!!!!なるほど!!!!!ちょっと待ってね!!!!!!!!!!はい!!!!!一旦練習やめ!!!!!!!!!!集合!!!!!!!!!!!!!!!早くしろ!!!!!」

うわぁ……なんかとんでもない大事が起きたみたいな集合のかけ方だ
ハードルが上がるぞ……
01391 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-vz6I)
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2019/02/25(月) 05:51:47.15ID:VkGQk/U8a
部員の皆さんは全速力でこちらに走ってくれてるにも関わらず、顧問はひたすら
「早く走れ!!!!!!!!!!」とか
「遅い!!!!!!!!!!」とか言ってた
野球部って怖い

俺はこの時点で心臓バクバクだった
俺みたいな陰キャが今からこの統制された軍隊組織に向かって覚束無いスピーチをするのだと思うと、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった

まもなくして集合した泥だらけの部員達は、顧問の「整列!!!!!!!!!!」の合図で手を後ろに組んで俺にめっちゃガンを飛ばしながら一列に並んだ
マジで怖い

「えー彼は今年の生徒会選挙で生徒会長に立候補した……えー……名前は!?」
「ひゃいっ、スグルですっ」
「スグル君だ!!!!!」
「ひゃいっ」
「彼が今からお前らに宣伝するそうなので、皆心して聞kおいこら!!!!!モジモジするな!!!!!!!!!!」
「ひゃぃ……ぁ……」
「じゃあいいよ、どうぞ!!!!!!」

スピーチをするなんて一言も言ってないんだが?
そう思った俺だったが、この空気でそれは言い出せない
何とか俺は即興で、自分のマニフェストやら意気込みやらを捻り出しながら喋った
喋っている時に「あ、この人が生徒会長だな」と目星がついたので途中からその人だけ見て喋った気がする
01401 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-vz6I)
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2019/02/25(月) 06:01:03.22ID:VkGQk/U8a
話し終えた俺は「あっもう、はい、終わりです、以上です」と小声で顧問に言った
顧問が俺の顔も見ずに「拍手!!!!!」と言うと皆無機質な拍手を俺に送ってくれた
スペツナズかこいつら

俺がその場を後にしようした時、顧問はテンションがアゲアゲになってきたのかこんな事を言い出した

「じゃあ、現生徒会長!!!!!!!!!!これに対して何か返事してやれ!!!!!」

無茶振りやんけぇ!
マジでビックリした
そんな願ってもないサプライズ、俺にとっては嬉しいが生徒会長はただ困るだけだろ……
だが現生徒会長は顔色一つ変えずに「はい」とよく通る声で返事すると、前に一歩出て話し始めた
流石に生徒会長になっただけの事はある
突然の事態への対応も優秀だ

「えー……スグル君。
一人で来て立派なスピーチを聞かせてくれてありがとう。感動しました。
その行動力は素晴らしいものだと思います。
頑張って下さい。応援しています。
おわr以上です」

全然感動してる感じはしなかったが感情が表に出ないタイプなんだろうか
とはいえ現生徒会長から「応援している」と言って貰えたのは有難かった
この一言で生徒会長が若干こちらに傾いていると周囲に印象づけられたかもしれない

俺は「ひゃいっ、ありがとうございました……!」と言うと顧問の先生に深々と頭を下げて、未だ後ろ手を組んで突っ立っている部員達をチラチラ見ながらその場を後にした
01411 ◆S3NdI8XwYo (アウアウエー Sa52-vz6I)
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2019/02/25(月) 06:08:02.06ID:VkGQk/U8a
以上が俺の部活への根回し奮闘記だ
ほんと疲れた

ところで、これをしている間に実は美術部から連絡があった
どうやら例のポスターが完成したらしい
俺はウッキウキでボンちゃんと中本と一緒に美術室へ向かった
ボンちゃんも「楽しみやねぇ!」とまるで自分の事のように喜んでいたのを覚えている
中本はニヤニヤしてた

「おっスグルクーン!待っとったよこっちこっち!」
部屋に入ると例の名前も覚えてない女子生徒に手招きされ、尾上さんの綺麗な横顔をチラチラ見ながら俺は完成品のポスターを見せてもらった

確か俺は超絶美化された自画像と一緒に
「皆さんの清き一票を」みたいなクソテンプレなキャッチコピーを添えてくれと注文したはずだ
さてさて、どうなってるかなぁ……^^


「皆きんの清さ一票を」

^^




^^;
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