1度目の母は物心なく消えたから、本当にあきらめがついていた
2度目の母はあきらめきれずとも、母ではないことが理解できていた
俺はどうしようもなくガキで無駄に大人だった
父と二人暮らしが始まった
自殺願望は相変わらずだったが、父を殺したいという気持ちがそこに加わった
父がいじめるから叔母が家出したのだと、そう思いたかったのだ
団地の5階から帰宅する父(車のエンジン音が判別できた)の頭上に包丁を投げ落として自分も身投げしようとして思いとどまる日々が続いた
思いとどまったのがなぜかと言われれば、こわかったのか父が好きだったのかそれはわからない
ただ実行しなかったというのが事実である