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県立歴史館が所蔵するカラーマイクロフィルム=千曲市
文献史料などの長期保存に使われるマイクロフィルムの国内製造を一手に担ってきた富士フイルム(東京)が、今月26日までの受注を最後に生産を終了する。
古文書などの記録媒体として活用
古文書や新聞などの記録媒体として活用されてきたが、デジタル技術の普及に伴い衰退。文書保存のデジタル化を進める一方で、マイクロフィルムによる保存を重視してきた長野県千曲市の県立歴史館の担当者は、デジタル機器の耐用年数はマイクロフィルムより短いとし、「長期保存の方法を模索していきたい」としている。
出荷のピークは2000年代
国産のマイクロフィルムは、1951(昭和26)年に富士フイルムが初めて製造した。同社の担当者によると、出荷のピークは2000年代。デジタル技術の普及に伴い衰退し、現在は当時の1割以下に需要が減った。複数の業界関係者によると、国内の同業他社も製造した時期はあったが、数十年以上前にさかのぼる。現在では海外でもマイクロフィルムの製造業者はほとんど確認されていないという。
県立歴史館では1994年の開館当時から、古文書や現代史資料といった文献などをマイクロフィルムに年間1~2本ずつ記録。開館前に収集したフィルムを含む約800本を、酸を吸収する中性紙箱に収め、室温20度に保った同館地下の書庫で保管している。
今月上旬、同館文献史料課の村石正行課長(54)が書庫内でマイクロフィルムの保存状態を確認していた。箱から取り出した20年以上前のフィルムを室内灯に透かすと、撮影された古文書が精細に浮かび上がった。
デジタル保存は閲覧に優れるが
同館では、文献の特性に応じてデジタル化も並行して行うが、本格的な移行はこれから。ハードディスクなどデジタル機器による保存は閲覧性に優れる一方、耐用年数の短さから新たな機器への更新が必要となり、データ消失のリスクを考慮したバックアップも欠かせない。村石課長は「大切な文献などを適切に保存できる方法を探っていきたい」と話す。
デジタルでのデータ消失を懸念
日本文学の関連資料を集積する国文学研究資料館(東京)の西村慎太郎教授(51)によると、デジタル機器による保存でデータ消失などのリスクを下げるには、複数の媒体に保存し、遠隔地での分散管理が有効とする。
文献のデジタル保存を実践する同館だが、西村教授は「デジタル機器は地震などの災害による物理的な衝撃に弱い。クラウド保存についても運営するサービスが終了すれば、データの存続は難しくなる」と指摘。「マイクロフィルムという選択肢がなくなる今、文書保存の在り方について国も自治体も本腰を入れて考えていく必要がある」と話している。
