「中国が日本産食品を全面禁輸でもGDPへの影響はわずか」と冷静な米主要紙。原発処理水の海洋放出
安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
8/29(火) 7:13

福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出が、24日始まった。これを巡り、環境団体や風評被害に苦しんでいる漁業関係者からの反発が高まっている。また韓国では放出反対派によるデモが起こり、中国は日本の水産物の全面禁輸に乗り出した。中国から日本関連の企業や学校に嫌がらせがあるなど、混乱が見られる。
処理水の海洋放出について、アメリカの対応は?また主要メディアはどのように報じただろうか?
有力紙のワシントンポストは放出2日前の22日、Is it safe to release water from Fukushima’s nuclear plant? What to know.(福島の原子力発電所から水を放出しても安全か? 知っておくべきこと)という見出しで、以下のように報じた。
「オリンピック・プール500個分以上の処理水が太平洋に放出」されることについて、「日本当局と国連の核監視機関(国際原子力機関IAEA)は国際安全基準に合致していると見なしている。しかし反対派による反発に直面している」。

「無視できる程度の放射能」

海洋生物への影響について、ハワイ大学の教授や英専門家から出ている安全性への疑問(植物プランクトンを経てマグロなどへ時間とともに汚染が蓄積していく生物濃縮の可能性。また起こりうる影響が十分に検証されていない問題点)にも触れている。一方で、同紙は「日本の排水システムは非常に効率的」と述べ、海洋放出が環境に与える影響については「世界にあるほかのどの核施設でも、低レベルの放射能を含む処理水の『ルーティーンの』放出と見なされるレベルのもの」であり、「無視できる程度の放射能」で「取るに足らないレベルだろう」という専門家の声を交えて紹介した。
漁業関係者との軋轢については「地元住民と、本当の意味での協議は行われていない」とし、この問題への取り組みに「遅過ぎることはない」とする専門家の意見を交えた。
放出開始以降の報道では、ニューヨークタイムズが、「日本政府と東京電力が処理水の安全性、そして放射性物質が国際基準を超えないよう継続的な監視を約束した」と報じた。ただし中国の反発について「7月だけで日本から約320万ドル(約4億7000万円)の新鮮な魚介類を輸入したが、処理水放出について『安全でない』とし日本産魚介類の輸入を停止した」。

(続く)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/d0d63729f1b31ea22e371b6d958fb76084e55f3b