日本、東南アジア占領地でユダヤ人保護 英傍受公電で裏付け

日本は第二次大戦中、枢軸同盟を結んだナチス・ドイツから再三、ユダヤ人迫害の要求を受けたが、
英国立公文書館が所蔵する日本外務省から東南アジアの大使に宛てた公電で、占領地に逃れてきたユダヤ人の保護を指示していたことが確認された。
専門家は、世界で反ユダヤ主義が広がる中で日本は難民を保護し、計約4万人のユダヤ人が生き延びたと指摘している。

ドイツのヒトラーは政権を掌握した1933年にユダヤ人弾圧を開始。満州や中国に迫害を逃れる難民が押し寄せ、近衛文麿内閣の「五相会議」は38年12月、
人種平等の原則によりユダヤ人を排斥せず、諸外国人と同等に公正に扱う「猶太(ユダヤ)人対策要綱」を作成。世界で唯一、ユダヤ人保護を国策として宣言した。

しかし、同要綱は41年12月、日本の対米英開戦で無効となり、42年3月、代わって「時局ニ伴フ猶太人対策」ができた。特殊な事情がない限り、
日本の占領地へのユダヤ人の「渡来」を禁止する内容だった。

確認されたのは同月29日にタイの首都バンコクの日本大使、31日に北部仏印のハノイの日本大使にそれぞれ宛てた公電。
外務省が「対策」を占領地の在外公館に伝えたのを傍受したもので、英暗号解読拠点「ブレッチリー・パーク」が解読。
最高機密文書として英訳され、英国立公文書館が「日本のユダヤ人政策」として保管していた。

ハノイ宛ての公電は「ドイツが海外在住ユダヤ人からドイツ国籍を剥奪したが、日本が特に(ドイツとの)関係を考慮する必要はない」とし、
慎重に対応すべきとの認識を表明。「ユダヤ人を追放することは国是たる八紘一宇の精神に反するばかりか米英の逆宣伝に使われる恐れもある」とし、
独伊の排ユダヤ政策と一線を画す考えを示した。

https://www.sankei.com/article/20230129-VACYLY5NBFJERGTI5MW5UGSRWY/