厚生労働省が6日発表した10月の毎月勤労統計調査(速報)によると、実質賃金が前年同月比2.6%減と、7カ月連続で減少した。減少幅は2015年6月(2.8%減)以来、7年4カ月ぶりの大幅な落ち込みとなった。

  現金給与総額は(名目賃金)は同1.8%増の27万5888円と10カ月連続で増加した。実質賃金のベースとなる消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年同月日4.4%上昇と、14年6月(4.4%)以来の高い上昇率となっている。

  厚労省の担当者は、実質賃金の下落幅拡大の理由について、物価の伸びが一段と大きくなっており、賃金が追い付いていない状態が続いていると説明している。ブルームバーグ調査の予想中央値は実質賃金が2.2%減、名目賃金は2.0%増だった。

  明治安田総合研究所の小玉祐一チーフエコノミストは、「物価の上昇率がこれほど大きいと賃金の上昇は到底追いつかず、実質賃金ではマイナスが避けられない」と指摘。こうした状況では個人消費も順調に伸びず、景気に前向きの循環も働かないため、「日本銀行としては出口にかじを切る訳にはいかない状況が続く」と語った。 

  日銀の黒田東彦総裁は11月18日の衆院財務金融委員会で、賃金上昇を伴う安定的・持続的な2%の物価目標は「来年度も達成されない」と説明。今金利を引き上げ、「経済の回復を遅らせて賃金を引き上げる余地を減らすことは好ましくない」との認識を示した。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-12-06/RMFZ35DWRGG001?srnd=cojp-v2