【ニューヨーク=吉田圭織】国連の安全保障理事会は30日、ロシアがウクライナ東・南部の4州で実施した「住民投票」を非難し、
一方的な併合の根拠と認めないとする決議案を否決した。米英など10カ国が賛成したが、ロシアが拒否権を発動した。中国とインドなど4カ国は棄権票を投じた。

決議案は米国とアルバニアが共同で提案した。「住民投票」を違法と指摘し、「ロシアによる無法行為は効力を持たず、併合の根拠となってはならない」と強調した。
ロシアの拒否権発動を受けて、10日以内に国連総会でロシアに説明を求める会合が開かれる。

米国などは安保理での否決を受けて、法的拘束力は持たないが国連総会で同じ内容の決議採択を目指す。米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は記者団に対して
「議論を国連総会の場に移す。世界の国々は他国の国境を引き直そうとする試みを違法だと明言するだろう」と話した。さらに、「1カ国もロシアに賛成しなかった」と述べ、ロシアの孤立を強調した。

一方、ロシアのネベンジャ国連大使は「安保理の理事国を直接的に非難する決議の事例はない。拒否権を行使するように仕向けている」と反発した。

シンクタンクの国際危機グループ(ICG)のリチャード・ガウエン氏は国連総会での決議採決について「ロシアのプーチン大統領が領土保全という基礎的な原則を脅かしたことで戦争に直接的関係がない国もウクライナを支持するだろう」と指摘した。
「西側諸国は国連加盟国の多数をロシアを非難するよう説得できると考えている」と述べた。


日本経済新聞 2022年10月1日 7:00
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN30E4K0Q2A930C2000000/