
粉ミルク汚染で乳児が死亡、細菌クロノバクター・サカザキとは 2月に米国で汚染死亡事故が発生、粉ミルク不足が深刻に
2022.06.21
食中毒を引き起こす細菌の中で、クロノバクター・サカザキ(サカザキ菌とも)は、大腸菌やサルモネラ菌ほど有名ではない。
だが、新生児や免疫力が低下している人には大きな被害を与えることがある。
2022年の初め、米国でクロノバクター・サカザキに汚染された粉ミルクを摂取した2人の乳児が死亡していたことが明らかになった。
2月、粉ミルクを製造した米アボット・ニュートリション社は大規模なリコール(自主回収)を実施し、ミシガン州にある同社の工場は操業を停止した。
2013年に学術誌「Food Microbiology」に発表された論文では、新生児がクロノバクター・サカザキに感染すると50~80%が死亡するとしているが、
幸いにも感染例は比較的まれで、米国では年に数件しか確認されていないと、オハイオ州にあるUHレインボー乳児・小児病院の
感染症対策担当副医長を務める小児科医エイミー・エドワーズ氏は説明する。
クロノバクター・サカザキの名前は、グラム陰性菌の研究で知られる日本の微生物学者、坂崎利一にちなんで名付けられた。
■クロノバクター・サカザキはどんな細菌?
クロノバクター・サカザキは一般的な知名度が低く、感染例も少ないが、どこにでもいる細菌だ。家庭でも、調理台やエアフィルターなどの表面から検出される。
今回は粉ミルクとの関連で有名になったが、昔も今も、生鮮食品、ハーブティー、下水など、あらゆるものから見つかっている。
クロノバクター・サカザキは人間の腸内にもふつうに生息していて、他の細菌によって制御されていると、エドワーズ氏は説明する。
しかし、免疫系が未発達で腸内細菌叢も成熟していない新生児は、クロノバクター・サカザキのような病原菌が体内に入ると、たちまち圧倒されてしまう。
そうなると、細菌は「敗血症を引き起こし、炎症によって血管の壁から血液が漏れ出して、心臓や腎臓など複数の臓器が機能不全に陥ります」とエドワード氏は言う。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/22/061700271/