屈折する「真実のウソ」に苦しむ主人公 いじめ自殺事件と女子高生を妊娠させた父の間で 「由宇子の天秤」9月17日公開

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 日本社会における正義とはなにか。目に見えない力でねじ曲げられてゆく真実。そうした矛盾に満ちた世界に生きる私たちにとって目をそらしてはいけない現実を、この映画を通して考えなければいけないのではないかと思ってしまう。17日公開『由宇子の天秤』(春本雄二郎監督)は日本の映画史に衝撃を与える。

 ドキュメンタリー・ディレクターの由宇子(瀧内公美)は1本のドキュメンタリーを仕上げようとしていた。3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件。事件を追う内容が身内批判につながると上司から指摘され、テレビ局の方針と対立するが、それでも食らいつく由宇子。

 そんな折、父(光石研)が経営する学習塾でも問題が起きる。塾に通う女子高生が妊娠。問い詰めると相手は父だという。その女子高生には「売り」をしているという噂があった。

 仕事では正義を貫こうとする由宇子は情報を操作しようとする上層部に怒りをぶつける。一方、父を何とか救おうとする自分に嫌悪を覚える。幾度も屈折する「真実のウソ」に由宇子は迷い苦しむのだった。

 由宇子役の瀧内公美は2014年の『グレイトフルデッド』で映画初主演。『火口のふたり』や『アンダードッグ』でその高い演技力を認められた実力派。来春にはマーク・ギル監督による『Ravens』(原題)のクランクインが控えている。

 春本監督によれば、14年に起きたあるイジメ自殺事件で、事件とはまったく関係ない人がネットリンチを受けたことに衝撃を受けたという。

 「私は事件の当事者でない一般人が一体、何を真実として正義をふりかざすのか、という点にある種の危うさと幼さを感じました。果たして目の前にある情報は真実なのか。それについて掘り下げたいと思いました」

 映画監督の行定勲は試写を見て「ここ数年の中で最も(衝撃を)くらった日本映画だ。正義とは社会においての矛盾を解き明かすことか? 自分の大切なものを守り抜くことか? 自分の在り方を考えさせられ、後に尾を引く」とコメントしている。

 とにかく今年一番の台風の目となる映画といって間違いない。