音楽に対するユダヤ人の影響力を激しく弾劾したにもかかわらず、ワーグナー自身は多数のユダヤ人と親交を結んでいた。たとえば、指揮者のヘルマン・レーヴィ、ピアニストのカール・タウジヒ、同じくヨーゼフ・ルービンシュタイン、音楽評論家ハインリヒ・ポルゲスなどである。さらに、ワーグナーが1865年から1870年にかけて書いた自伝の中では、1840年代初頭のパリでユダヤ人ザムエル・レールス(言語学者)と結んだ交遊を「わが人生における最も美しき友情の一つ」に数えている。

ワーグナーの継父ルートヴィヒ・ガイアー(一部に実父説もある)はユダヤ人だった可能性が疑われており、この点から、ワーグナーの反ユダヤ主義は一種の近親憎悪だったという説もある。