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「陸舟奔車」製作の中心になった村西晃徳さん。左は平石久平次の墓=2021年2月12日午後2時12分、滋賀県彦根市中央町の長松院
世界最初期の自転車ともいわれる江戸時代のペダル式三輪車「新製陸舟奔車(りくしゅうほんしゃ)」を、彦根総合高校(滋賀県彦根市)の3年生が復元した。発案者の彦根藩士、平石久平次(くへいじ)時光(1696〜1771)が描いた設計図を元に、2カ月半かけて作った。卒業前の一大プロジェクト。動き出したきっかけはコロナ禍の影響だった。
【写真】「陸舟奔車」を作った(左から)村西晃徳さんと辰已龍之介さん、指導した熊谷貴文教諭=2021年2月9日午後4時19分、滋賀県彦根市芹川町の彦根総合高校
復元した陸舟奔車は全長2・2メートル、幅1メートル。本体はベニヤ板製で、舟の形をしている。前輪一つと後輪二つの三輪構造。後部に後輪を回転させるペダルがあり、本体中央のハンドルを握って立ってこぐ。
ガタガタガタ……。
2月、彦根総合高校の廊下で、製作の中心になった村西晃徳さん(18)が復元車のペダルをこぐと、音を立てながら、ゆっくり前進した。
製作したのは村西さんや辰已(たつみ)龍之介さん(18)ら6人のグループ。「実はコロナ禍だからこそ実現したんです」。担当した熊谷貴文教諭(44)がそう話した。
きっかけは、例年校外に出て地域の歴史文化を学ぶ課題研究の授業が、「密接を避ける」という理由でできなくなったことだ。
昨年11月、熊谷教諭が生徒たちに提案したのが、陸舟奔車の模型製作だった。3年生は少し前、久平次の墓がある長松院(ちょうしょういん)(彦根市中央町)で座禅を体験。当時境内に展示されていた陸舟奔車の復元品を見学していた。
すると、生徒から「せっかくだから人が乗れるモノを」と声が上がった。工作が得意な村西さんを中心に、取り組み始めた。
「工業科じゃないのに乗り物を作れるわけがない」
当初は乗り気ではなかったという村西さん。だが、熊谷教諭がホームセンターでベニヤ板や車輪、ボルトなどを買ってくると、作れそうな気がしてきた。
久平次の「新製陸舟奔車之記」(市立図書館所蔵)を元に熊谷教諭が設計図を描き、生徒らは毎週金曜、放課後に居残りして製作した。