緊急事態宣言によって多くの飲食店が通常の営業ができなくなり、経営も打撃を受けています。そんな中、日本に来て20年になる中華料理店の店主が、毎日、無償でお弁当を提供し続けています。
その数、1日500人分で「毎日のコストは約10万円」。それでも続けるのには理由がありました。

来日22年の店長
店長の李さん(45)は遼寧省出身です。日本に憧れて1998年に日本語学校で勉強するために来日し、その後、専門学校に進学しました。

卒業後に貿易会社に就職。中国へ出張する機会が多く、天津に本店がある火鍋料理の店「三巴湯火鍋」の味のとりこに。学生時代にアルバイトとして飲食業に携わっていたこともり、料理人になることを決意します。そして 2013年に念願だった自分のお店「三巴湯火鍋」(さんばたん)を開きました。

火鍋料理のしゃぶしゃぶのほか、串焼きなど、四川料理から東北料理まで200から300種類をつねに提供しています。

現在は錦糸町と新宿に二つのお店を持っており、李さん自身、日本に帰化しました。
休業しようと思ったら……
お弁当の提供を始めたのは4月14日からです。

「お得意様のことを考えると、なんらかの形で料理を提供しようと思い、これまではやっていなかったお弁当を始めました」

4月7日に政府が緊急事態宣言を出したことで、李さんも4月10日から店を休業にしようと考えていました。

ところが、顔なじみのお客さんから、店の開店状況や出前に関する問い合わせが相次ぎました。

はじめは常連客へのサービスとして、無料でお弁当の提供をしようと思い、200人前を用意したという李さん。始めてみると、予想以上の人がお弁当を求めて店にやってきたそうです。

「それだけ、生活が苦しい人が目の前にいる」

そう感じた李さんは、4月14日から500人分に増やし「無償提供 毎日500食」の貼り紙も店外に貼るようにしました。
いつか「爆食いに」感謝の手紙
お弁当は「マーボー豆腐」、「チンジャオロース」、「ホイコーロー」、「野菜炒め」、「マーボーなす」など毎日4、5種類用意しています。

お昼と夜2回のお弁当を提供し、昼と夜のおかずも違うそうです。

李さんが自慢するのは、お店特製の「から揚げ弁当」です。味がしっかり染みこんでいて、中華風。「美味しいと評判ですよ」と胸を張ります。

お店に来る人の中には、感謝の気持ちとして、飲み物やお茶、お菓子を持ってくる人もいるそうです。

そのなかに、「爆食いに行きます」と日本語の手紙を渡したお客さんがいました。

「老板&みなさん」から始まる手紙に次のように書かれていました。