新型コロナウイルスで社会不安が広がる中、那覇市役所前のヘイトスピーチ街宣がさらに悪質化している。
「今入国しているチャイニーズは歩く生物兵器かもしれない」などと中国人に対する差別と排除を扇動。識者は実際に暴力を誘発しかねないと懸念する。(編集委員・阿部岳)

 街宣は「シーサー平和運動センター」の久我信太郎氏らが主に毎週水曜日に実施する。「中国で2次パンデミックが始まっている」「ウイルスが変異して感染力が高まっているかも」などと根拠不明な情報を拡散。
国際指針に反する「武漢肺炎」という用語も連呼し、偏見をあおっている。

 関東大震災の朝鮮人虐殺を巡る「TRICK」の著者でノンフィクション作家の加藤直樹さんは
「ヘイトスピーチは平時でも許されないが、社会の不満や不安がたまっている状況では、わらの山にマッチを投げ込むようなもの。関東大震災の時のように具体的な暴力に結びつきかねない」と非難する。

 「沖縄にもどこにも中国人の住民や滞在者はいる。巧妙化するデマを信じて彼らを危険にさらすことがないよう、私たちが注意しなければならない」と語った。

 ヘイト街宣は5年以上続いているが、目の前にある那覇市役所も県庁も放置してきた。白充(ペクチュン)弁護士は「行政が差別に歯止めをかける役割を放棄すれば、被害は広がる一方だ」と指摘する。

 川崎市は刑事罰付きでヘイトスピーチを禁じる条例を制定した。白弁護士は
「沖縄でも条例制定を念頭に置くべきだが、条例がなくても人種差別撤廃条約や憲法があり、行政ができることはある。まずは知事や市長が差別を許さないという明確で毅然(きぜん)としたメッセージを出すべきだ」と求めた。

https://news.goo.ne.jp/article/okinawa/region/okinawa-20200515090000.html