往路7位の創価大は10時間58分17秒で総合9位。同大初のシード権を獲得した。
11位でタスキを受けた10区の嶋津雄大(2年)が1時間8分40秒の区間新記録を叩き出す爆走。9位まで順位を上げてフィニッシュした。

 流行の厚底シューズとは違うメーカーの靴を履いた嶋津は、左太もも裏がつりかけながら何度も患部を叩いて鼓舞。
2人を抜き去り、シード圏の9位でゴールになだれ込んだ。
区間賞の力走を見せ、「みんながつないだ思いを乗せて走り切れた。うれしくて、幸せ」と振り返った。

 2年の嶋津はチーム内でライトノベルを描く“作家”としても有名。
大学入学後にペンを執り、陸上競技と異世界のコラボレーションを描いた短編作品がこのほど完成したという。
争いの起きた異世界で平和の象徴である陸上競技を通じ、「女子を勝たせる」という独特の世界観を表現。
ペンネーム「アイランズ」で4月の電撃文庫の新人賞に応募予定で、こちらの大成も目指している。

 ランナー兼ライトノベラー。くしくも、大会前に榎木和貴監督に提出した目標設定用紙には「シード圏でゴールテープを切る。俺の勝利を目指す」という趣旨の小説がコンパクトに書かれていたという。
指揮官は「他の選手は設定タイムなどを書いたが、嶋津だけは唯一、短編小説を書いてきた」と苦笑いするが、指揮官の期待にも応える走りで最高の結果を出した。

 嶋津は網膜色素変性症という病とも闘っていた。暗闇で目が見えにくくなるため、日の出の遅くなる冬場の朝練習を積むことが難しかった。
若葉総合高時代は70メートルほどの校舎の廊下を走るだけだった。練習環境にも恵まれた創価大を選択し、しっかり練習を積めたことが実を結んだ。
嶋津は「一歩踏み出せない人に勇気を与えられた」と感無量の様子だった。

 難病とも向き合う箱根ランナーが大逆転でチームを救う奇跡のストーリーを完結させた。
最高の筋書きを自ら演じた嶋津は「主人公のような走りができた」と夢心地に浸っていた。

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