「対象が広がり過ぎると現場が混乱」と経団連

こうした活動も汲まれ、10月21日の労働政策審議会で厚生労働省が出した
「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」(以下、指針案)では、
フリーランスや就活生、つまり「事業主が自らの雇用する労働者以外の者」に対するハラスメント対策として、
社員と同様に「ハラスメントを行ってはならない方針の明確化」に加え「相談があった場合には、
必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましい」という文言が入った。

指針案はパワハラを対象としたものだが、フリーランスへのハラスメント対策の部分は、
セクハラやマタハラの指針においても同様に改正される予定だ。

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これは非常に画期的な一歩である。雇用労働者を所管とする厚労省が、労働者(被雇用者)以外の人に
言及した指針案を作ることは、これまでの霞が関の常識では考えにくかった。

今回、厚労省がフリーランスや就活生も考慮した指針案を出した背景には、今年5月29日に
ハラスメント防止法等が成立して労働者に対するハラスメント防止措置義務が企業に課された際に、
フリーランスや就活生など労働者ではない人についても、指針等で必要な措置を講じるべきだと
参議院で附帯決議がなされたことが大きい。

その一方で、正直に言えば「対策を講じることが望ましい」という指針案の表現では、
拘束力が弱すぎるのではないかという懸念も感じている。

指針案は、ハラスメント防止のための啓発や相談対応などの具体的な取り組みを政府が企業に
義務付けるものだが、フリーランスに関してだけは「措置義務」でも「配慮義務」でもなく「望ましい」
との表記になっており、これではハラスメントが横行している当事者の実態には見合わない。