<金口木舌>ローマの休日を考える

〈目の前に剣闘士が横たわるのを見る/競技場は彼の周りに揺れ動き、彼は息絶える/ローマの休日のために屠(ほふ)られる〉。英国の詩人バイロンの「チャイルド・ハロルドの巡礼」の一節だ

▼古代ローマ市民が休日に競技場で奴隷の死闘を見て楽しむ日常を描いた。この詩から英語で「ローマン・ホリデー(ローマの休日)」とは他人の犠牲を楽しむ娯楽のことをいう

▼ドイツ語でシャーデンフロイデといい、ナチスによるユダヤ人のホロコーストも想起させる。
現代はネット空間がローマの競技場か。
「正義を振りかざして誰かを叩(たた)きたい人が増えている」。
脳科学者の中野信子さんは現代のシャーデンフロイデを指摘する

▼スマホを操作しながら自転車を運転する人を呼び止めて警察に引き渡し、相手の顔もぼかさず公開する動画が賛否を呼んでいる。
ネット上のさらし行為は「正義」か、それともやり過ぎか

▼改正道路交通法が1日から施行された。
運転中にスマホなどを使う、いわゆる「ながらスマホ」の罰則が強化された。
通話や操作による交通事故は増加傾向で、県内でも昨年は23件の関連人身事故が発生し最近10年で最も多くなった

▼ローマで確立された法体系は近代市民法の創設にも貢献した。
厳罰化による犯罪抑止への期待は、ながらスマホだけではない。
法規制とは別に個々人の規範の議論があっていい。

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-1040749.html