(社説)辺野古判決 「脱法行為」許した司法


法の趣旨を踏みにじる政府の行いを、法を守らせるべき裁判所が追認する。とうてい納得できない判決だ。
 沖縄・辺野古の埋め立て工事をめぐり県と国が争っている訴訟で、福岡高裁那覇支部は県側敗訴の判決を言い渡した。

 昨夏、海底に軟弱地盤が広がっていることが発覚したのを受けて、県が埋め立て承認を撤回したのが発端だった。
防衛当局は直ちに、埋め立て法を所管する国土交通相に対し県の措置の取り消しを求め、望みどおりの裁決を
得て工事を強行した。

まさに「奇策」というべきで、多くの行政法の研究者らから批判や疑問の声があがった。
県側も、この法律に基づいて不服申し立てができるのは、個人や企業などの私人に限られると主張した。
だが判決は、たしかに埋め立て法には私人と国とで扱いに異なる部分はあるが、本質において両者に違いはないと述べ、
法の抜け穴をくぐる国のやり方を容認した。

 もう一つの争点をめぐる判断にもあきれる。
県側は、同じ内閣の一員である国交相に公平中立な審査は期待できず、裁決は違法だと訴えていた。
これについても判決は「閣議決定があったからといって、大臣の判断を直ちに拘束するものとはいえない」として、
県側の主張をあっさり退けた。

 建前はそうかもしれない。
だが辺野古を取り巻く情勢を見れば、国交相に独自の判断ができないのは自明ではないか。

物事の本質から目を背けた判断を続けていれば、司法に対する信頼は失われるばかりだ。

https://www.asahi.com/articles/DA3S14232027.html