性別欄「その他」は差別? 自治体の住民申請書類、表記法に苦慮

 LGBT(性的少数者)に配慮するため、住民が自治体に提出する申請書類の性別欄を削除したり、
「男」「女」の二つだった選択肢に「その他」「答えたくない」などの項目を加えたりする動きが、少しずつ広がっている。
一方、「『その他』という表現は、差別につながるのでは」といった指摘もあり、各自治体は配慮のあり方を模索している。

 京都新聞の双方向型報道「読者に応える」にメールを寄せた京都府城陽市の60代男性。
高齢者クラブが市の補助金を受けるため提出する会員名簿の性別欄が「男」「女」「その他」となっていたことに、疑問を抱いたという。

 性別欄は、2018年度は「男」「女」のいずれかを選ぶ形式だったが、19年度は「男」「女」「他」に変更。
別紙の集計用紙は「男性」「女性」「その他」となっていた。

 男性は「『他』という言葉からは『普通ではない』との印象を受ける」と話す。
5月に民放テレビ番組が、飲食店客の性別を明らかにしようとして謝罪する事態になったことを例に、
「『その他』という表記が、性別を面白おかしく扱うことにならないか」と懸念。「配慮のつもりが、逆に差別を生むのでは」と指摘する。

中略

 「他」「その他」という表記にしたのはなぜか。市高齢介護課によると、自由記述にするなどの案も出たが、
集計のしやすさなどを考えてこの形に決まったという。「指摘を真摯(しんし)に受け止め、クラブ側と話し合って検討したい」とする。

 申請書類の性別欄の見直しは、京都市や宇治市も進めている。
京都市では18年度、231件の文書で欄を削除するか表記を工夫した。宇治市でも19件の文書で欄を削除した。

 京都市では職員向けのハンドブックを作り、表記の工夫の仕方を例示。
自由記述できるようにしたり、「答えたくない」との選択肢を設けたりするよう勧める。
ただ、担当者は「システムやスペースの問題で、自由記述にするのが難しい文書もあり、
『その他』という表記だけになっている文書がある可能性はある」と話す。

 配慮の仕方に迷う自治体もある。現在、見直しの研究を進めているという自治体の担当者は
「さまざまな方法が考えられ、これが正解とすぐ決めるのは難しい」と苦慮する。

■男性から女性への性別適合手術を受け、戸籍も変更した亀岡市議の赤坂マリアさんの話

 「他」は、排除されているようにも見える。「私たちは人間じゃないのか」と思う人がいるかもしれない。
選択制なら、「男」や「女」ではない選択肢を記号にしたり、可能な限り自由記述にしたりしてほしい。

https://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20190701000024
https://www.kyoto-np.co.jp/picture/2019/07/20190701090833LGBT1000low.jpg
老人クラブへの補助金申請の際、京都府城陽市に提出する名簿や集計用紙。本年度分には「その他」「他」との表記がある