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中国国家主席・習近平(しゅうきんぺい)の母校として知られる清華大(北京市)の講堂。
四月二十一日、トヨタ自動車社長の豊田章男は約六百人の学生らにこう語りかけた。

「トヨタは百年近くの車づくりの経験を持っています。
 そして私たちは、中国の新たな発展の機会を手助けしたいと思っています」

スマートフォンで学生と「自撮り」し、中国語も交えてざっくばらんに接した豊田。
中国政府が最近、力を入れ、トヨタが得意とする燃料電池車(FCV)分野での貢献を念頭に
「持続可能なエネルギー源を創出して、車だけでなく、中国の生活のあらゆる面に利用していく」
と力を込めた。

トヨタは、二〇二五年をめどに中国での現地生産を現状の二倍以上の二百八十万台に引き上げる計画だ。

「井戸を掘った人を忘れない」。

困った時に受けた恩義を忘れない、という意味のことわざがある中国で、先鞭(せんべん)を
つけることの重要性を知り尽くす豊田は、FCVを足掛かりに中国で飛躍するシナリオを描く。

講演では、水素分野で清華大に研究拠点を設ける計画を披露。
さらに翌日、政府系の北京汽車集団グループに大型バス向けにFCシステムを提供する協業も矢継ぎ早に打ち出した。

今回の講演のきっかけは昨年五月にさかのぼる。
北海道にあるトヨタの拠点を訪れた中国首相の李克強(りこくきょう)は「究極のエコカー」と
呼ばれるFCVに関心を示し、技術援助を要請。豊田は講演で、李の訪問を「光栄だった」と振り返った。

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