丸山穂高衆院議員が戦争による北方領土奪還の可能性に言及したことを受け、安倍政権は領土返還交渉でロシアが一段と態度を硬化させかねないと懸念している。
丸山氏を非難し、粘り強く交渉を続けるのが確固たる方針だと改めて明確にすることで、事態の沈静化を図りたい考えだ。

 菅義偉官房長官は14日午前の記者会見で、丸山氏の発言を「誠に遺憾だ」と批判。「外交交渉によって領土問題の解決を目指す方針に変わりはない」と強調した。
これまで「議員の発言へのコメントは控える」と繰り返してきた菅長官が、野党議員の失言について論評するのは異例だ。
 菅長官は午後の会見でも「誰が見ても不適切な発言。個人で責任を取るべきだ」と切り捨てた。
丸山氏を除名した日本維新の会幹部によると、維新側が発言を知ったのは首相官邸からの電話がきっかけだったという。

 河野太郎外相は会見で「交渉はなるべく波静かな中でやりたい。発言が決してプラスになるとは思わない」といら立ちを隠さなかった。

 政権が丸山氏の発言に敏感になる背景には、ロシアが領土交渉で強硬姿勢を強めていることがある。
日ロ首脳は昨年11月、1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速することを確認。しかし、その後、ロシアは「北方領土」との呼称にまで異論を挟むなど、態度を硬化させている。
 
このため、当初取りざたされた6月の20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた大筋合意は絶望的になっており、日本政府は交渉戦略の練り直しを迫られている。
宮腰光寛北方担当相は会見で「発言で交渉に影響が出ないようにしていかなれければいけない」と強調した。

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