《もしあなたが不正義が行われている状況で中立なら、あなたは圧政者の側を選択したことになる》。
これは著者が引用しているアパルトヘイトに立ち向かったツツ牧師の言葉である。
県知事選、県民投票、そして衆議院補欠選と「辺野古新基地建設反対」の県民意志が明確に示されたにもかかわらず、辺野古の豊かな海に土砂を投入する暴虐が権力を導入して、暴力的に強行され続けている。

このような時、私たちはどうしなければならないか。
その理不尽を止めるために行動し、怒りの声をあげるというのが、仮にも国民主権を掲げる民主国家の国民の正常な感覚である。
だが現実はそうはならない。「どちらとも言えない」「分からない」という中立を装う立場が幅をきかす。
《国民の政治的リテラシー低下》と氏は指摘する。
《人権や自由が抑圧され……国連特別報告員に警告を受ける今の日本でさわやかな沖縄人や上品な女性でいるより、怒れる沖縄女性でありたい》と氏は決然と述べる。

氏はこのようなきっぱりした姿勢から、沖縄の地元紙の論壇・声欄に投稿を続けてきた。
本書はそのような怒りの声=沖縄の怒りを一冊にまとめたものである。
著書はW章から成る。
I章 基地問題・辺野古・沖縄の尊厳回復、U章 政治的リテラシー・教育・カジノ問題、V章 政治への「怒」・TPP・憲法、
W章 新聞各紙への投稿・書評。取り上げた事象は多岐にわたり、個別的でありつつ、普遍的である。
何よりも、起こった事象に即座に自分の見解を鋭く切り込んでいる。

《東京で通訳の手伝いでオリバー・ストーン監督とピーター・カズニック氏の末席を汚した》という経歴を持つ著者は、名桜大の英語の教授を務め、国際会議で同時通訳をこなす国際的な体験の持ち主である。
氏の怒りは辺野古問題にとどまらない。暴走するアベ政権全般に向けられている。
理不尽な事象への激しい怒りを述べる彼女であるが、本書と同時に発刊した詩集『沖縄から 見えるもの』においては、実にナイーブな知性と感性を見せてくれる。本書と併せて薦めたい本である。

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