飲酒事故「人生壊された」 痛み、恐怖今も 左脚切断23歳の男性
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飲酒運転による事故が道内で後を絶たない。道警によると、道内で昨年起きた飲酒絡みの人身事故は発生件数、負傷者数ともに2年ぶりに増加に転じた。
札幌・ススキノで昨年10月に発生した飲酒ひき逃げ事件では、巻き込まれた歩行者の男性(23)が左脚を切断する重傷を負った。
「安易な飲酒運転によって人生が壊された」―。男性は事故から約5カ月たった今も、傷の痛みや事故の恐怖感に苦しんでいる。

ゲストハウスで働き、充実した日々

 「事故現場を通るタイミングが少しでもずれていたらと、いつも考えてしまう…」。男性は苦しそうに語った。左脚のズボンの裾から真新しい義足がのぞく。

 神奈川県出身で、中学時代はバスケットボールで活躍。高校と大学時代はアジアを中心に海外への一人旅を重ねた。
昨年春、知人の誘いで札幌へ移住し、ゲストハウスで働き始めた。外国人客と接する日々は充実し、交際女性との同居を始める矢先の事故だった。

 昨年10月6日の深夜。仕事を終えて帰宅するため、ススキノの繁華街の歩道を歩いていた際、後方からRVにはねられた。近くの店の看板と車体の間に体を挟まれて転倒。左脚に「燃えるような痛み」を感じた。

「地獄のような痛み」との闘い

 「大丈夫? ごめん」。早口で3回繰り返す声が聞こえた。現場から逃げた加害者の声だと知ったのは裁判でのことだ。必死に意識を保ち、自ら周囲の人に119番を頼んだ。

 入院生活は「地獄のような痛み」との闘いだった。膝下15センチまで切った左脚は感染症のため、さらに5センチ切断。
傷口を開き洗浄する手術を4日連続で行った。精神的な落ち込みも激しく「人生を失った気がした。毎日自殺を考えた」。
車を見るだけで怖くなり、睡眠導入剤が欠かせなかった。母親も札幌での看護のため、休職を余儀なくされた。

 加害者の男(22)は自動車運転処罰法違反(過失致傷アルコール等影響発覚免脱)、道交法違反(ひき逃げ)などの罪で起訴され、公判で「当時は会社の飲み会帰りでビールなど15杯程度を飲んだ」と述べた。
男は昨年12月、懲役3年6カ月(求刑懲役6年)の判決を受けた。

「なぜ、危険な運転をやめられないのか」

 ただ、男への感情は複雑という。男の家族の苦しみも想像するからだ。
「誰かを憎みたくない。加害者は僕の苦しみを知り、自分のしたことを一生考えてほしい」。
さらに一緒に飲んだ同僚や飲食店など「社会全体で飲酒運転をなくす意識を持つべきだ」と訴える。

 男性は1月、関東の病院に転院。義足を着け歩行訓練に励むが、今も痛みを緩和する薬がないと眠れない。
飲酒やあおり運転による事故の報道を見る度、こう思う。「事故は誰も幸せにしない。なぜ、危険な運転をやめられないのですか」