わたし個人の先祖を思い出すだけでも、その最も古い人と言われているクラウススは、(ローマ人ではなく)ザビーニ族の出身だった。
その彼がローマに移住した紀元前505年、ローマ人はこの他部族出身者とその一族を自分たちと同等のローマ市民にしただけでなく、
クラウススには元老院の議席を与え、貴族の列に加えたのである。これら先人たちが示してくれたやり方は、
我々の時代になっても統治の指針になりうると考える。それは、出身地がどこであろうと出身部族がかつての敗者であろうと、
優秀な人材は中央に吸い上げ活用されるべきとする考え方である。

われわれは(ローマの有力貴族の)ユリウス一門が3代目のローマ王に征服されたアルバからの移住者であることを知っている。
コルンカニウス一門が、初代ローマ王ロムルスに敗れたカメリオからの移住者であることも知っている。
ポルキウス一門の出身地が、紀元前380年になってからローマ市民権を与えられたエトルリアのトゥスクロであることも周知の事実だ。

このように、それがかつてローマに敗れた人々であろうと、優秀な人材であればローマに集まり元老院の議席を満たしてきたのが我々の歴史なのである。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15003