【パリ=白石透冴】フランス全土で続く反政権デモを受け、マクロン大統領は10日、
2019年1月から最低賃金を約8%引き上げるなどデモ参加者に大幅に譲歩する施策を発表した。一部の社会保障増税も中止する。
デモの収束を最優先したが、財政再建の遅れは避けられない。
予定していた他の改革にも影響が出る可能性があり、マクロン政権の根幹が揺るぎかねない事態だ。

デモの要求に応じ、現在月約1184ユーロ(約15万2千円)の最低賃金を19年1月から100ユーロ引き上げるとした。
「企業の追加負担は発生しない」と語った。どのような制度になるかは明らかでないが、
国費負担となる可能性がある。

また18年1月に実施した社会保障増税は当初から評判が悪かったが、
月収2千ユーロ以下の退職者に対しては増税を取りやめる。18年末のボーナスに課税しないことや、
19年から残業勤務に原則課税しないことも決めた。一連の譲歩案を11日に議会に提案する考えだ。

マクロン氏は18年、株式を含む保有資産に課税する「富裕税」を投資家を遠ざけるなどとして廃止していた。
デモ参加者は金持ち優遇につながると批判していたが、これについては廃止を譲らなかった。
「(改革の)後退は我々を弱体化させる」と主張した。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38772380R11C18A2000000/