筆者は20年来のフランス在住者として、日本メディア、特にテレビによる今回のデモ報道に、強い違和感を禁じ得ない。
過激な破壊シーンばかりがクローズアップされ、デモの実態や政界の対応などの核心が、適切に伝えられていないと感じる。

さらに言えば、社会における「デモ」の意味や重要性が誤解されていることが、とても歯がゆい。

日本においてデモとは、あたかも「一部の過激集団による迷惑行為」のような扱いをされている。しかしフランスのそれは違う。

市民の声を集めて政治に届ける、激しくも有効なコミュニケーション手段の一つだ。
それはフランスの国家制度である「共和制」、出自も生活レベルも異なる様々な市民が
「共に和をなして生きる」ことを目指す制度の、根幹をなす権利でもある。

この記事では、「フランス人はなぜデモをするのか」を解きほぐしながら、今フランスで起こっていることを在住者の視点でお伝えしたい。


これまでのデモとどこが違うのか

かくして黄色ベストの人々は各地で反政権デモを行っているが、彼らには、これまでのデモ隊とは一線を画する特徴がある。

それは右派(保守系)・左派(社会主義系)といった政治思想による団体ではなく、
そのすべてが乗り入れている「庶民」という社会階級の集団ということだ。

彼らを繋ぐのは「お金が足りない」という共通の生活不安である。そしてその原因にある、
「金持ち優遇の代償に搾取されること」への怒りだ。政治思想で分断されない分、素朴で強い連帯感があり、数も多い。

右派・左派がどれだけ願っても叶わなかった「思想を超えた団結」を、SNSを介し、自然発生的にやってのけたのだ。
黄色ベスト運動をフランス革命に比する声は、それが庶民VS富裕層という階級闘争の形を取っていることに起因している。

黄色ベストの人々は元は善良な勤労市民のため、当初の運動も平和的で、
高速道路料金所の封鎖・無料化や速度レーダーの妨害などから始まった。




フランス全土が怒りに震える「黄色ベストデモ」という“階級闘争”(崎 順子)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58845