人工肛門や人工ぼうこうなどを腹部に付けている人が、公衆浴場で入浴を拒まれる例がある。厚生労働省が2015年2月に告示した「浴場業の振興指針」には「衛生上問題ない」と明記されており、支援団体はチラシを作成し、正しい理解を求めている。

人工肛門や人工ぼうこうは、病気や事故が原因で消化管や尿管が損なわれた人のための器具で、「ストーマ」と総称される。ストーマを利用している人は「オストメイト」と呼ばれる。

神奈川県座間市の入浴施設で14年4月、オストメイトの女性が入浴中に係員から退出を求められた。女性から日本オストミー協会神奈川支部を通して連絡を受けた県と座間市が、施設側に理解を求めたところ「他の客から苦情があると受け入れは難しい」と回答があった。

神奈川支部によると、15年には、仙台市のホテルで、オストメイトの女性が、他の客と一緒にならない「家族風呂」を使うよう求められるというケースがあった。ほかにもスーパー銭湯やホテルの大浴場、スポーツジムの風呂などの利用を断られるケースが各地で起きているという。

ストーマから便や尿を受け止める使い捨ての袋は「積層プラスチックフィルム」でできている。防臭性があり、熱に強く、正しく使えば排せつ物が漏れることはない。
厚労省の浴場業の振興指針には「衛生上問題ない形で入浴サービスを楽しんでいただくことは可能であり、その点を正しく認識し、適切に対処することが必要」と記載されている。

入浴を拒まれる事態を受け、神奈川支部は昨年秋、県と共同で2万部のチラシを作成。入浴施設に対して理解を求めるとともに、オストメイトにもマナーを求める「公衆浴場を利用するための手引き」を掲載した。
脱衣所で袋の着脱や交換をしないなどの注意のほか「洗い場ではストーマが左にある人は左端に座ると人目に付きにくい」といった対策も盛り込んだ。

日本オストミー協会によると、オストメイトは全国で20万人以上いると推定される。チラシ作成に関わり、自身もオストメイトである神奈川支部の須田紗代子事務局長(68)は、
以前通っていたスポーツジムで風呂の利用について問い合わせることができず、利用を控えていたという。「問題ないと分かっていても多くのオストメイトが入浴施設の利用をためらっている。
一般客の理解を得られないと施設側も受け入れられないと思うので、正しい理解が広がるよう働きかけていきたい」と話している。【藤沢美由紀】




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