<社説>国が撤回停止請求 民主主義蹂躙する暴挙だ

米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、元知事による埋め立て承認を県が撤回したことを受け、政府が対抗措置を取った。
行政不服審査法に基づき国土交通相に審査を請求し、撤回の効力停止を申し立てたのである。

9月30日の知事選では、辺野古移設を推進する安倍政権が全面支援した候補者を、新基地建設反対を訴えた玉城デニー知事が大差で下した。
2014年の知事選に続き、県内移設に反対する県民の意志が明確に示された中で、埋め立てを強行することは民主主義を踏みにじる暴挙としか言いようがない。

そもそも、行政不服審査法は、行政庁の違法・不当な処分などに関し国民の権利利益の救済を図ることなどを目的としている。本来、行政庁である政府は、同法による救済の対象にはなり得ない。

にもかかわらず、県が埋め立て承認を取り消した15年には、沖縄防衛局長が自らを「私人」と主張して承認取り消しの執行停止を申し立てた。
国交相はこれを認めている。一般国民のために作られた制度を、政府が「私人」と強弁して乱用するのは詐欺にも等しい行為だ。
政府は、法治国家としてはあり得ない横暴な手段をまたしても取ろうとしている。
国交相は、このような欺瞞(ぎまん)に満ちた出来レースにまたしても加担するのか。

<中略>

「国民の皆さまは、新基地反対の圧倒的な民意が示されたにもかかわらず、民意に対する現政権の向き合い方があまりにも強権的であるという現実をあるがままに見てほしい」と玉城知事は訴えた。

沖縄との対話の道を一方的に閉ざし、問答無用で新基地建設に突き進む。
地方の民意を蹂躙(じゅうりん)する安倍政権の態度は全国民にとって脅威となり得る。沖縄だけの問題ではない。

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