京大吉田寮「自治どこへ」 大学「倒壊の恐れ」9月末で退寮通告

築100年を超える京都大の吉田寮(京都市左京区)を巡り、老朽化により倒壊の恐れがあるとして9月末までの
退去を求める大学と、寮生の間で対立が続いている。寮生側は学生の意見を考慮しない一方的な決定だと
反発するが、大学側は交渉の打ち切りも示唆し、解決の糸口は見えない。

◇老朽化対策に疑念

「問題を解決する気が本当にあるのか」。文学部4年の松本拓海さん(23)は、大学の姿勢に強い疑念を抱く。
7、8月に開かれた交渉の場で、老朽化対策について曖昧な回答に終始し、改修などの具体的な検討状況を
明らかにしないためだ。

大学は昨年12月、今年9月末までに全寮生が退去し、新規に寮生を募集しないよう求める「基本方針」を公表した。
「廃寮」は考慮せず、老朽化対策を進めたいと説明。平成27年建設の新棟の居住者にも退去を求めたことには、
「寮が提出する居住者名簿は信用できず、どこに誰が住んでいるのか分からない」と理由を挙げた。

◇大学「退去期限変わらない」

退去希望者には民間の代替宿舎への仲介を進め、寮を去った学生も多いが、一部の寮生は猛反発。
複数の改修案を大学に提示している中での方針表明に、「学生の意見を聞かずに一方的な通告だ」と撤回を求めている。

両者の交渉は今夏、約3年ぶりに再開したが、大学は「話し合いによって、退去期限や方針が変わることはない」と表明。
山極寿一学長は7月に「対話の必要性は感じている」と述べたものの、大学は9月中旬、寮生との建設的議論が
困難だとして「現状では話し合いを行える状況ではない」との見解を示した。

「大学は吉田寮を今後どうする考えなのか」。不安な日々を送る男子学生(22)は「自分たちのことは自分たちで
決めるという、長年培われてきた自治の文化をなんとか後世に残していきたい」と話している。

■吉田寮 大正2年建設の現棟と、平成27年建設の新棟からなる自治寮。京都大の学籍を持つ全ての学生らに
入寮資格があり、寮生の募集、選考は学生が実施する。1カ月の寮費は、光熱費などを含め約2500円。
8月末時点で約170人が暮らす。かつての寮生に、青色発光ダイオード(LED)の開発で26年にノーベル物理学賞を
受賞した赤崎勇氏らがいる。

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