問われているのは、5年9カ月におよぶ長期政権の功罪と、この国の次の3年のありようである。
安倍首相と石破茂・元幹事長は、身内の党内ばかりではなく、広く国民の疑問や不安にこたえる、率直で具体的な議論を戦わせねばならない。

 ■自浄作用が問われる
 首相が3選されれば、通算の在任日数は戦前の桂太郎首相の2886日を上回り、憲政史上最長になる可能性がある。1強の弊害があらわになった安倍政治の総括なくして、先に進むことは許されない。
 安倍1強は政治から緊張感を奪い、政官関係をゆがめる忖度(そんたく)も生んだ。政権・与党のおごりやゆるみによる不祥事は後を絶たず、強引な運営が常態化した国会では、行政監視機能が形骸化している。
 この政治の劣化をただせるのかどうかの試金石は、行政の公正性、政治の信頼を深く傷つけた森友・加計問題に正面から向き合えるかどうかだ。

 ■優先順位を見極めよ
首相はきのうの会見で、新しい任期の3年で取り組む課題だとして、秋の臨時国会への自民党案の提出も「一定の目標」と位置づけた。限られた政治的エネルギーを何に振り向けるか、国民生活を第一に現実的な判断が求められる。
岐路にある外交・安全保障政策も、中長期的な視点で検証・整理が必要だ。
年末には5年ぶりに防衛大綱の見直しがある。首相は北朝鮮問題をテコに防衛力強化を説き、米国との一体化路線をひた走る。「防衛のあり方、日米地位協定のあり方も、国民の利益中心に考えたい」という石破氏と、骨太の論争がみたい。
総裁選の情勢は、7派閥のうち5派閥の支持を固めた首相が優勢との見方がもっぱらだ。論戦そっちのけで勝ち馬に雪崩をうつ構図は露骨なばかりだ。
個々の議員には、有権者に選ばれた国民の代表として、全体に流されず、政策論争の中身に目をこらし、自分の頭で考え判断してほしい。
長期政権の負の遺産を自ら清算できないようでは、自民党全体に対する国民の視線は厳しさを増すばかりだろう。
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