神奈川県の東名高速道で昨年6月、「あおり運転」で夫婦が死亡した事故を巡り、無関係の会社に関する虚偽情報がインターネット上に拡散された名誉毀損きそん事件。福岡県警が
書類送検した11人は全員面識はなく、「ネットの書き込みを信じた」などと供述している。「殺人犯」と中傷された経験があり、この会社を支援してきたお笑いタレントの
スマイリーキクチさん(46)は「安易な書き込みで加害者になるという自覚を持つべきだ」と訴えている。
「容疑者が働いている会社の電話番号です」。北九州市八幡西区の建設会社への中傷や嫌がらせ電話が始まったのは福岡県中間市の建設作業員石橋和歩被告(26)
(危険運転致死傷で起訴)が昨年10月10日に逮捕された直後からだった。
掲示板やSNSには、会社の住所や電話番号、社長(48)の自宅住所もさらされた。会社への嫌がらせ電話は100件を超える日もあり、「若い衆を派遣するぞ」と脅された。
会社は一時休業に追い込まれ、警察にパトロールを依頼。取引先への説明にも追われ、「何かあったら遅い」と子供も小学校を休ませた。
騒動に巻き込まれてから8か月後。福岡県警が書類送検した11人は福岡市や埼玉県など1道8県の30〜60歳代で会社員や派遣社員、運送業や自営業者だった。
匿名のネット空間の捜査は難しく、最初に虚偽情報を書き込んだ人物は未解明のままだ。社長は「書き込んだ人物は他にもいるはずだ。民事訴訟も含め徹底的に解明し、被害をなくしたい」と訴える。
「白状して楽になれよ」「生きる資格はねぇ」――。スマイリーさんは、殺人事件の犯人だと事実無根の中傷被害にさらされた。1999年に東京・足立区の女子高生コンクリート
詰め殺人事件に関与したとネット上に虚偽の情報が書き込まれた。2009年に警察が書き込みを特定したのは、大学職員や会社員、主婦ら全く面識のない人たちだった。
建設会社の中傷被害については報道で知った。社長に連絡を取り、警察に捜査をしてもらう準備として被害についての証拠集めをアドバイスした。スマイリーさんは
「ネットのつるし上げに参加することは、書き込んだ自分を追い込むことになると自覚してほしい」と訴える。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20180831-OYT1T50079.html