物価上昇鈍化に構造的要因 デフレ脱却の道筋は不透明

日銀は物価が想定より伸び悩む要因を集中点検し、7月31日公表の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で「企業の賃上げや値上げへの慎重な姿勢」や「家計の値上げ許容度の高まりにくさ」など構造的な要因を示した。
雨宮氏は「長期の低成長やデフレの経験で醸成されたある種の社会的モードだ」と説明。短期間での解消は難しく、大規模な金融緩和によるデフレ脱却の道筋は不透明感を増している。

景気回復に伴い、本来は物価は上昇するはずだが、そうなってはいない。
人手不足にもかかわらず、賃金の伸び悩みが続き、6月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率は0.8%と、日銀が目標とする2%とかけ離れている。

日銀は企業の賃金引き上げはパート時給で明確な一方、賃金水準の高い正社員には賃上げより雇用の安定を優先する傾向が強いと指摘した。
低賃金で働く女性や高齢者が急速に増えていることも、結果として全体的な賃金の上昇ペースを緩めていると分析する。

また、値上げによる顧客離れを警戒する企業も少なくないとみる。原材料が上昇しても企業はITなど省力化投資による生産性の向上でコストを吸収。
割安なネット通販の急速な普及も、小売店などの値上げを押しとどめているとした。
一方、家計の節約志向についてはアンケートなどを基に「家計の値上げに対する許容度」として分析。大規模緩和の開始前と比べれば許容度は上がったが、2017年末には低下するなど先行き経済や社会保障制度に対する不安から高まっていないと指摘する。

雨宮氏は「物価抑制要因の多くは次第に解消していく可能性が高い」との見解を示した。
だが、市場では「これだけの構造要因があるので、2%の物価目標の実現は困難なのが明らかだ」との見方もくすぶる。
日銀は物価上昇見通しを来年度1.5%、20年度は1.6%に下方修正した。
物価上昇を抑制する構造要因が複合的に作用する状況で、大規模な緩和を粘り強く続けたとしても物価目標を達成できるかは見えておらず、苦しい金融政策運営が続きそうだ。


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