「事件の被告は絶対許せない。でも、日々の業務に忙殺されると、どこかで『気持ちは分かる』と思ってしまう自分が怖い」。
やまゆり園とは別の関東地方の入所施設で働く男性職員(34)は、そう打ち明ける。

 「人の役に立ちたい」と福祉を学び、3年前から職に就いた。やりがいは感じるが、入所者の大半は最重度の障害がある。
たたかれたり、コミュニケーションを取ることに悩んだりすることも多い。1人で30人の面倒を見る夜勤は、トイレ誘導や失禁対応でほとんど眠れない。

 疲れがピークに達した夜勤明け。何回も着替えを拒む男性が服をかんで離さなかった。
思わずカッとなって服を引っ張ると、男性の歯が抜けて床に転がった。我に返り、医療機関を受診させて謝罪した。
後悔と同時に、この仕事の怖さを感じたという。
 集団生活が障害者にストレスを与えていると思う。入浴は午後1時から10人ずつ。午後8時の消灯で居室は相部屋だ。
「誰でもプライバシーが欲しいし、好きな時間に食事をしたり寝たりしたい。入所者の乱暴な行動には理由がある。もっと丁寧に関わりたいのに手いっぱい」。
気持ちが通じ合った時は本当にうれしい。だから職場環境の改善を強く望む。施設管理者の男性(65)は、ため息をついて言った。
「職員はスーパーマンではない。政府が『介護離職ゼロ』を目指すなら、引き受け手となる現場の処遇改善に目を向けるべきだ。
慢性的な人手不足なので、被告のような人物がまぎれ込んでもおかしくない」


https://mainichi.jp/articles/20180729/ddm/041/040/114000c