【特集】女性躍動「サウジは変わる」
保守派、怒りの沈黙
「いいわ、見せてあげる」。マルワ・アブドラさん(26)は少しためらった後にそう言うと、全身を覆う衣装アバヤを脱ぎ捨て、軽快なスポーツウエア姿になった。
サウジアラビア西部ジッダの女性専用フィットネスクラブ。バーベルを持ち上げ、サンドバッグにパンチを入れる姿は力強い。「サウジは変わる。生き残るには、それしかないの」
イスラム教の厳格な解釈で社会を統制してきた産油国サウジが急激な改革開放を進めている。突然訪れた自由の兆しを若い世代や女性は熱烈に支持する。
一方、保守派の異論は封じられ、怒りが地下に潜む。サウジは本当に変われるのか―。
サウジ史の転換点は1979年だ。イラン革命に衝撃が走り、武装集団がメッカの聖モスクを占拠する事件まで発生した。
安定の揺らぎに焦った王室が頼ったのが、関係の深いイスラム教ワッハーブ派宗教界だった。
戒律の厳格化で社会の保守化が進み、自由は失われた。女性はアバヤ着用が求められ、男性の許可なしに外国旅行も就労も結婚もできない。
映画監督のハリド・ハラビさん(51)は「40年近い暗黒時代」と批判する。
改革の旗振り役はムハンマド・ビン・サルマン皇太子(32)。2016年、石油に依存しない経済への転換を目指す「ビジョン2030」を発表したのに続き、
昨年10月には「世界に開かれた穏健なイスラム」の実現を宣言し、宗教改革に踏み込んだ。映画や演劇の自由化に加え、6月には女性の自動車運転も解禁される。
マルワさんのフィットネスクラブも、この流れに乗って昨秋オープンした。会員は10〜60代の女性89人。
「みんな割れた腹筋を夢見て頑張っています」と代表のマハ・ハワジュさん(25)。プールサイドにはビキニ姿の女性が横たわっていた。
https://this.kiji.is/376557748961592417
サウジアラビア西部ジッダの女性専用フィットネスクラブを案内するマルワ・アブドラさん=4月(共同)
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