ひきこもりといえば、主に10代から20代の若者が「陥ってしまう」というイメージが強い。しかし現在では、かつて若かったひきこもり者が
十年二十年と続けたことで、三十〜四十代のひきこもりが大勢、生み出されている。内閣府が2015年に調査した結果によれば、
15歳から39歳のひきこもりは推計値で54万1千人と、前回調査の2010年に比べて減少傾向にあるものの、ひきこもりの期間が
「7年以上」と答えた人は増加しているという。

ひきこもりがいる家庭そのものが社会から断絶されているパターンでは、政府統計からすでに「漏れている」ことも考えられる。
東京都下の公営団地に住む奥田伸介さん(仮名・57歳)は、隣家にひきこもりの男性がいることを承知して十数年になるが、
ある日驚くべき事件に遭遇した。

「お隣のXさん(80代)の息子さんは、たぶん30年くらい引きこもっていました。以前は近所中で噂になり、お気の毒ねなんて話していたんです。
夜に息子が暴れたりして、警察沙汰になったこともありました。でも急に静かになってね。Xさんも最初は悩んでいたようでしたが、
途中から諦めたようで」(奥田さん)

隣に「ひきこもり」が住んでいることが「 正直気味悪かった」(奥田さん)ともいうが、いつしかひきこもりの息子の存在を誰もが忘れ去り、
そのうちXさんが町内会や団地の催しにも顔を出さなくなると、Xさん家族そのものが、まるで「いない存在」になった。

「回覧板だって受け取ってもらえないし、いつ行っても居留守ですからね。町内会の名簿からもいつの間にか名前が消えていました。
そしたらビックリですよ。朝起きたらXさん宅に警察が来ていて、刑事さんがうちにも聞き取りに来られた。Xさんは自宅の布団の中で
数か月前に亡くなっていて、息子は精神状態がおかしくなっていて、病院に連れていかれたんだそうです。こんなに身近で起きたことに、
我々としても責任を感じますが……。でも私に何かできることがあったのかといえば、たぶんありません」(奥田さん)

ひきこもりやひきこもりがいる家庭には、できるだけ早く第三者が関与し、社会復帰や社会との関わりが立たれないよう、つなぎ留めておく必要がある。

http://blogos.com/article/298414/