WHO(世界保健機関)は、動脈閉塞の原因となるトランス脂肪酸を今後5年間で世界の食品市場から完全排除することを目標に、それに向けた各国への支援計画を発表した。

 過去には感染症の根絶を強く推し進めてきたWHOだが、現在は、慢性疾患につながるリスクの排除を目標に掲げている。

 WHOは5月14日の声明の中で、世界中で多くの死を未然に防ぐため、トランス脂肪酸の排除が不可欠だと述べた。
WHOは、多くの加熱食品や加工食品に含まれるトランス脂肪酸を摂取することが、毎年50万人以上が心疾患で死亡する原因となっていると推定する。


「これは危機的なレベルであり、現在我々がとりくむ最重要課題です」WHO事務局長のテドロス・アダノム氏は、5月14日にジュネーブで開かれた記者会見でそのように述べた。

 WHO当局者は、多くの国ですでに取り組みが進んでいる現状を考慮し、5年後には目標達成可能と想定している。
デンマークはすでに、15年前にトランス脂肪酸を全廃した。
以来、アメリカおよび40ヶ国以上の高所得国が、食品市場からのトランス脂肪酸の排除に取り組んできた。

 WHOの「健康と開発のための栄養部門」のディレクター、フランセコ・ブランカ博士は、WHOは現在、中・低所得国がトランス脂肪酸排除に乗り出すよう促していると述べた。

 合成トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングなどの製造プロセスにおいて、植物油に水素を加えて固化する際に生成される有害物質だ。
健康分野の専門家によれば、トランス脂肪酸はキャノーラ油やその他の製品で代替可能だという。また一部の肉や乳製品には、天然由来のトランス脂肪酸が含まれていることも事実だ。

 WHOは、各人が摂取カロリーに占めるトランス脂肪酸を1%以下に抑えるよう推奨している。

「トランス脂肪酸は有害な化合物ですが、大きなコストをかけずに簡単に市場から排除できます。排除しても、食品の品質には何の影響もありません。」とブランカ博士はコメントした。

 食品メーカーに根本的な転換を促すためには、おそらく各国が規制や法律を用いる必要があると専門家は見ている。

世界のトランス脂肪酸を5年で全廃 WHOが目標に
https://newsphere.jp/national/20180520-1/