◇福岡の運送会社、250回も 代償は「浮かせた額の3倍」
https://mainichi.jp/articles/20180514/k00/00m/040/130000c

 高速道路の上り線と下り線を走る2台のトラックの運転手が途中のサービスエリア(SA)などで落ち合い、それぞれの自動料金収受システム(ETC)カードを交換する手口で、福岡市の運送会社が1年余りで約250回不正通行を繰り返していた。
会社は経営環境の悪化が理由と釈明したが代償は高く、不正に浮かせた額の3倍の約687万円を支払う羽目になった。国土交通省は「不正通行は確実に発覚する」と警告する。


この会社は福岡市東区に本店登記し、福岡県から宮崎県や鹿児島県方面にトレーラートラックでコンテナを輸送していた。


 高速道路を運営するNEXCO西日本が今年1月、支払いを求めるため福岡地裁に提出した準備書面によると、同社は2015年4月〜16年5月に九州道などで不正通行を会社ぐるみで248回繰り返し、通行料金約229万円の支払いを免れた。
同社は不正通行を認め、今年3月に調停が成立。免れた通行料金に加え、ペナルティーとして免れた分の2倍の約458万円を支払うことになった。


 不正通行の手口は、上り線と下り線を走行する2台のトラックが、中間付近のSAやパーキングエリア(PA)でそれぞれのトラックに登載されているETCカードを交換。
相手のトラックが入ったインターチェンジ(IC)近くの出口で降りて実際よりも走行距離をかなり短く偽装していた。関係者によると、上りと下りのSAやPAが近接している場合、従業員用の通路などを使って徒歩で落ち合うことが可能という。

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 ◇悪質な場合は道路整備特別措置法違反容疑などで逮捕も


 ETCの不正通行は全国で相次いでいるが、出口で前の車のすぐ後ろにくっついてゲートをすり抜ける「カルガモ走行」など単純なケースがほとんどだ。会社ぐるみで1年余にわたり不正を続けた今回のような悪質な事例が明るみに出ることは少ない。


 もっとも、高速道路運営会社はさまざまな方法で対策を講じている。ETCカードを交換した今回のケースでは、利用履歴上はICを入ってから出るまで短距離のわりに時間がかかっているため、何度も繰り返すと履歴から不正通行が疑われる。
一方で「途中で休憩していた」と反論されることも想定される。


 各社はこうした不審なケースを見つけると、ICの出入り口に設置したナンバープレート読み取りカメラでICを入った時と出た時のナンバーの違いを確認したり、実際に不審車両を追跡したりするなどして、不正通行の証拠を突き付け、認めさせるという。
それでも料金を支払わないなど悪質な場合は、道路整備特別措置法違反容疑や詐欺容疑などで逮捕されることもある。


 国土交通省の担当者は「安易な気持ちで不正に手を染めると大きなリスクを負う」と強調する。